「聖なる科学(2)」

スリ・ユクテスワの「聖なる科学」という本には、ずばり「病気の原因」という 項目がありますが、そこだけを載せても理解できない部分があると思いますので、 その前後の部分も転載したいと思います。 解りにくい言葉については、より理解が深まるように簡単な解説も付けておきます。 また、本の内容と私の考えとは必ずしも全てが一致するわけではないため、その点に ついては、私なりの考えも併せて書きたいと思います。 「聖なる科学」からは  ・人間の本来の食物とは何か  ・歯の観察  ・消化管の観察  ・感覚器官の観察  ・乳児の食物の観察  ・病気の原因  ・子供の発育  ・自然に順応した生活は感情を鎮める  ・性欲  ・生命の木の根 ここまでを転載する予定です。 まず今回は、最初の2項目です。  ・人間の本来の食物とは何か  ・歯の観察 「人間の本来の食物とは何か」 まず第一に、われわれの本来自然の食物が何であるかを知るために、消化器である 歯と消化管の形状と、動物が食物を見つけた時に示す感覚器官の反応と、母乳に ついて観察してみよう。 「歯の観察」 歯について見ると、肉食動物の場合は、門歯はあまり発達していないが、犬歯は 獲物を捕らえるために著しく長く、なめらかで、とがっている。 そして、臼歯もまたとがっており、それらの先は上下が重ならず、獲物の筋肉繊維 を引き裂くのに都合がよいように、横に沿って並んでいる。 草食動物の場合は、門歯が特に発達しており、犬歯は発達していない(もっとも 象のように、犬歯が武器として発達した例外もある)。 また臼歯は先が平たくて面積が広く、側面だけがほうろう質になっている。 果食動物の場合は、歯全体がほぼ同じ高さである。 犬歯はわずかに長く円錐形であるが、鋭くはない(これは明らかに、獲物を捕らえる ための形ではなく、強くかむための形である。) 臼歯は先が広くなっているが、食物をかんで歯を横にずらしたときに食物が歯の横へ こぼれ落ちないように、歯の上面にほうろう質のひだがあり、肉をかむのに好都合な とがった形はしていない。 一方、熊のような雑食動物は、門歯は草食動物のそれに似ており、犬歯は肉食動物の それに似ており、臼歯は双方の目的に合うように、とがったものと平たいものの 両方をそなえている。 さて、人間の歯を観察してみると、それは肉食動物の歯にも、草食動物の歯にも、 雑食動物の歯にも似ていない。 そして、まさに果食動物の歯の特徴をそのままもっているのである、 このことからまず、人間のからだは果実(果物、木の実、穀物、根菜類など)を 常食とする果食動物であると推論することができる。 ここからは、私の解説です。 まずは、人間の歯の図をご覧ください。(「日本人体解剖学(下)」より)
「聖なる科学」に書かれている、「門歯」とは上記の図でいうと「切歯」、つまり 前歯にあたります。 「臼歯」は、いわゆる奥歯のことです。 肉食動物と草食動物に関しては、よく耳にすると思いますが、「果食動物」という 言葉は、あまり聞かないでしょう。 具体的にはどのような動物が果食動物なのか?ですが、例えばリスやネズミなどの 齧歯目(げっしもく)は、主に木の実や穀物などを食べているので、果食動物と 言ってよいでしょう。 もっと人間に近いところでは、ゴリラやチンパンジーなどの類人猿が、果食動物 でしょう。 ゴリラやチンパンジーの食べ物として、すぐに思い浮かべるのがバナナやリンゴ というところからも、納得していただけるのではないでしょうか。 ただし彼らも、地域や状況によっては昆虫を食べたり、ときには小動物を捕獲して 食べることもあるようです。 類人猿が果食動物ならば、人間が果食動物と考えるのが、もっとも理にかなって いるのではないでしょうか。 ちなみにチンパンジーの遺伝子の97%は人間と同じですし、マレー語である オランウータンを日本語に直訳すると、「森の人」ですから。 話しは逸れますが、マクロビオティックを考えた桜沢如一の師匠である、明治時代の 医師、石塚左玄が明治31年に出版した「食物養生法」には、歯に関する部分で 「聖なる科学」の内容と、ほぼ同じことが書かれていますので、そのうち紹介します。 明治時代の日本の医師とインドのヨギが、似たような内容を書いているというのは なかなか興味深いことです。 マクロビの桜沢如一は、陰陽五行や体内原子転換など、常人には理解不能な違う 世界へ行ってしまいましたが、石塚左玄は身体の構造や、体液の組成をもとにして 非常に論理的に、人は何を食べるべきかについて書いています。 私の勝手なイメージで石塚左玄桜沢如一を比べると、石塚左玄日露戦争で 論理的な思考と緻密な戦略でバルチック艦隊を破った当時の日本軍、一方で 桜沢如一は、精神論で破滅の道に突き進んだ、第二次世界大戦当時の日本軍と いう感じでしょうか。 必ずしも時代が下ったほうが、人が論理的に考えるようになるわけでは無いと いうことです。 マクロビを全否定しているわけでは、ないですけどね。 それと、前回からの流れでいくと爬虫類由来の人達が肉を好んで食べるとしても ある意味、当然のことなのかもしれません。 To Be Continued.                                   白山オステオパシー院長