「磁気治療の原理。(真野説)-その6」(最終回)

このシリーズも、今回が最終回となります。 今回は、治療に磁石を使用する際の私なりのポイントです。 あくまでも私なりの考え方なので、もしフルフォード先生がこれを読んだら 「いや、それは違うよ。」と言われるかもしれませんが・・・。 ・ポイント1  磁石を一つだけ使う場合は、N極側を体に当てる。 解説: ローレンツ力の式   F = B・q・v [N]  ( 磁束密度B[T]、電荷q[C]、速度v[m/s] ) から分かるように、イオンにかかる力は磁束密度に比例します。 つまり、磁束密度が高いほど大きな力が発生するわけですが、磁束というのは 磁石のN極から出てS極に入るので、障害がある部分に磁石を当てる際は 磁石のN極側を体に当てるのが、最も磁束密度の高い状態になるという ことです。

左腰部のSDに1つの磁石を使用しているところ。

以前(3年くらい前)にピップエレキバンの会社に、磁石の極性について 問い合わせたことがあります。 回答は、予想通り肌に付く側の極性がN極でした。 私が理由を聞いたところ、担当者は「製造工程上の理由です。」と答えて いましたが、私はやはり効果を考えてN極側を肌に付けているのだと 考えています。 下の写真は左の腰部に問題があり、その部分に磁石を当てているところです。 体に付く側がN極、上面がS極となるように磁石を置いています。

近くに反対の極性の磁石を配置すると、磁束密度は上がります。

胸椎9番左のSDに2個の磁石を使用しているところ。左はN極が下、右はS極が下。

上の写真とは左右の極性が逆ですが、磁束の状態はこのようになります。もしSDが右にある場合には、この図のように磁石を配置します。

参考までにザッカリー・コモーDOがロバート・フルフォードDOについて 書いた本、「サトル・オステオパシー」から、磁石を一つ使ったケースを 紹介します。 これは6歳の多動症の男の子に対する、家庭でのケアのアドバイスの一部です。 「毎晩2時間、足の裏にN極を当てること(磁石が生命場を刺激し、肉体の回復を  助ける)。」 ・ポイント2  磁石を2つ使用する場合は、機能障害のある側はN極を体に当てて、もう一つは  S極側を、体に当てる。 解説: これは脊柱にSDがある場合などに有効な方法です。 例えば胸椎9番の、左横突起の部分にSD(体性機能障害)があったとします。 この場合は胸椎9番の両サイドに磁石を置き、左側の磁石はN極を体に当て、 右側の磁石はS極を体に当てます。 このように磁石を配置することによって磁束の散乱を防止し、SDがある部分の 磁束密度を、より高めることが出来るのです。
では「サトル・オステオパシー」から、磁石を2つ使用したケースを紹介 します。 これはコモー先生の奥様に対する、フルフォードDOの治療の一部です。 私達がベッドにうつ伏せになった患者をともに評価し、彼女の胸椎部中央と 肋骨の弱い状態について意見が一致した後、彼(フルフォードDO)は仕事の 準備をした。 フルフォードは衣装ダンスへと向かって、およそ10x25cmの大きさの一対の 磁石を取り出すと、それらを互いに離して機能障害のレベルで脊柱の両側に それぞれ置いた。 彼は目を閉じて集中し、そして待った。 磁石を取り除いた後、私達がともに患者を再評価すると、組織が緩和され シンメトリックであることが分かった。 これは、彼の磁石利用の典型的なプロトコルであった。 彼は磁石を頻繁には使わず、彼が選んだ磁石も普通の電子機器メーカーから 入手できるものである。 それらはおよそ500ガウスのパワーを持っており、オーディオ・スピーカー用 磁石として販売されていた。 私達は時折、靴の内底、マットレス、衣服に磁石を利用する一般の風潮に関して 議論を交わした。 彼の見解によると、これは影響が測り知れず、未調査の状況で使用量に規制が ないため、使いすぎの危険があることを指摘していた。 エーテル体に関する限り、その影響は無害か、有益、あるいは有害であるかも しれない。 磁石は、正しく働くためには、慎重に、そして、監視下で適用される必要のある 力強い力を有していた。 しかし、最も重要なことは、それらは診断・治療を行うプラクティショナーの 助けようとするインテンションを必要としていたことであった。 磁石の成功とパワーは、人との間の相互作用にあり、単に磁石固有の特質に あるわけではない。 フルフォード先生は治療の際に「インテンション(意図)」が、いかに大切かと いうことを書いています。 自分が「どこを?」、あるは「何を?」治療しているのか明確に解っていなければ 治療効果が半減してしまうのは、当然の結果です。 しかしコモー先生は「インテンション」という言葉に対して、あまりにも特殊な解釈を し過ぎている、きらいがあります。 パーカッションハンマーを使用する時でも磁石を使用する時でも、あたかも治療者が 念を込めなければ治らないような書き方をしていますが、そんなことはありません。 最初に書いた治療例でも、お母さんが自分の子供に磁石を当てるのに、2時間も 念を込め続けていたら、疲れ切ってしまいますよね。 たとえ治療者が磁石を置いたまま、その場を離れても磁石は電磁気学の法則に 従がって、きちんと仕事をしてくれます。 現代の一部のオステオパスの方々は、一般人には意味不明な用語を使用して、 オステオパシーを摩訶不思議なものにしたがりますが、本気でオステオパシーを 広めたいなら、スティルの原点(解剖学と生理学)に立ち返ってオステオパシーを 摩訶不思議なものに貶めるのは、もうやめませんか? 身内にしか通じないような言葉を羅列して自己満足しているから、T大病院の 医師に「あれは宗教みたいなものだから、気を付けた方がいい。」などと患者が 言われる羽目になるのです。 オステオパスは説明をする際に、もっと誰もが理解できる言葉を使うべきです。 (私はフルフォード先生同様にコモー先生も尊敬していますので、決して  コモー先生の言っていることを、否定しているわけではありません。) 磁気治療の説明から、かなり脱線してしまいました。  「スミマセン、モウシマセン。」 ・ポイント3 可動制限のはっきりしたバリアがあるSDの部分には、磁石は適さない。 解説: 真野理論では磁石を使用することにより、体液中のイオンを沈着物に打ち込んで 分解させるわけですが、カチッとした可動域制限のあるSDは私に言わせると 沈着物が結晶化して、固まっている状態です。 この状態になってしまったものは、やはり物理的な衝撃を加えなければ、なかなか 制限は取れません。 逆に制限はあるが、バリアがはっきりしないタイプのもの。 例えばMET(筋エネルギーテクニック)やSCS(ストレインカウンターストレイン) などのテクニックが有効なタイプのSDには、磁石の使用は効果を上げることが 出来るということです。 患者にその都度、圧痛があるかどうか聞きながらSCSを使用している人には、 分かりにくいかもしれませんが、圧痛点がある部分には必ずなんらかの可動制限が 存在します。 とりあえず、これで「磁気治療の原理。(真野説)」のシリーズを終了します。 いつもの繰り返しになりますが、「正常」と「異常」を見分けることが治療を する際の、第一歩です。                                     白山オステオパシー院長