「技の名は。」

当院には、医療関係の方々がこれまでに数多く来院されています。 例えば医師免許を持った○○医と呼ばれる方々、あるいは柔道整復師鍼灸師、 整体師、カイロプラクター、理学療法士、看護師ほか多岐に渡っています。 これらの方々に施術中によく聞かれることが、 「今、先生が使っているこのテクニックは何という名前のテクニックですか?」 というものです。 当院に来るような医療関係者の方ですと、過去にオステオパシーテクニックの セミナーに参加した経験がある方もいます。 そのため、彼らが今までに習ったテクニックとは全く違う方法で私が施術し、 しかも、自分自身の体の感覚で効果があるということが実感出来るために、 私の方法に興味を抱くようです。 参考までに私が学校の授業やセミナーで学んだテクニックですが、以下と なります。 学校の授業で学んだテクニック。  ・直接法  ・誇張法  ・筋エネルギーテクニック(MET)  ・ストレイン・カウンターストレイン(SCS)  ・ストラクチュラルテクニック  ・内臓マニュピレーション  ・頭蓋仙骨療法(CST)  ・リンパテクニック セミナーで学んだテクニック。  ・スティルテクニック      (講師:R・V・バスカーク DO)  ・靭帯性関節ストレイン(LAS)(講師:トーマス・クロウ DO) 上記はセミナーも含めて、全てジャパン・カレッジ・オブ・オステオパシーの 在学中に学んだもので、卒業後は一度もオステオパシーテクニックのセミナーを 受講したことはありません。 また、現在の私の施術ではこれまでに授業やセミナーで学んだテクニックは全く 使用していません。 当院に来る医療関係者が受講したことのあるオステオパシーテクニックセミナーの、 ほとんどは上記の中のどれかでしょうから、私の施術を受けて 「先生、このテクニックは何というテクニックですか?」 と聞きたくなるのだと思います。 しかし私が 「特に名前はありません。」 と答えると、オステオパシーのテクニックは誰かから教えてもらうものだと考えて いる皆さんは「???」となります。 当院には私が卒業したオステオパシー専門学校の後輩たちも、ときどき施術を 受けに来ますが、彼らの中には私の施術方法を「眞野式」とか「眞野テクニック」 と呼ぶ人達がいます。 しかし、私の方法はこれまでにも何度も書いてきましたが、Dr.スティルの著書や Dr.フルフォードの著書を参考にして、自分なりに工夫しただけのものですから 私の施術方法に名前など無いのです。 そもそもDr.スティルやDr.フルフォードの治療方法をスティルテクニックだとか フルフォードテクニック、パーカッションハンマーテクニックと現代のオステオパスが 勝手に呼んでいるだけで、彼らの著書には独自のテクニックの名称など一切 出てきません。 彼らはただオステオパシーの基本原理に沿って、そのときの患者の体の状態に合った 方法を選択していただけで、それらにいちいち名前を付けていたら、キリがなくなって しまいます。 ちなみに私の参考図書ですが、 Dr.スティルの 「Philosophy of Osteopathy」 1899 「The Philosophy and Mechanical Principle of Osteopathy」 1902 「Osteopathy Reserch and Practice」 1910 Dr.フルフォードの 「いのちの輝き」 Dr.コモーがDr.フルフォードについて書いた 「サトル・オステオパシー」 Dr.アンドルー・ワイルの 「癒す心、治る力」においてDr.フルフォードについて書かれた部分。 私はジャパン・カレッジ・オブ・オステオパシー在学中の後半、そして卒業後は ほぼこれらだけを頼りにして研究を重ね、現在の自分なりの方法が出来上がって います。(一部はエドガー・ケイシーのリーディングを参考にしています。) 私が参考にしているオステオパスとして、二人のオステオパスの名前をあげましたが そのうちの一人、Dr.フルフォードは著書「いのちの輝き」の中で、このようなことを 書いています。    問題にぶつかり、自分の手に負えないと思ったときには、私はいつも    1902年に出版されたスティル博士の『オステオパシーの理念と    力学的原理』(Philosophy and Mechanical Principle of Osteopathy)    を読み返したものだった。    そして、ほとんどの場合、そこに答えを見つけることができた。 Dr.フルフォードがこのように書いているということは、究極的には私が参考に しているのは、オステオパシー創始者Dr.スティルだけと言ってよいでしょう。 しかしながら、現在の日本のオステオパスの中でDr.スティルの著書の内容を知って いる人はほとんどいません。 私がオステオパシーの専門学校に通っていたのは2009年~2011年ですが オステオパシーが日本に伝来してから数十年が経過した当時も、まだDr.スティルの 著書の日本語訳はありませんでした。 そのため私は苦心惨憺して原書を読みましたが、幸いなことに2014年に日本 オステオパシーメディスン協会(JOMA)が、「オステオパシーの哲学」の 日本語版を出版してくれました。 恐らくこれまでは、海外の著名な先生方のテクニックを学ぶためにテクニックに 関する著書の日本語訳が優先されてきたのだと思いますが、ようやく日本でも Dr.スティルのオステオパシーの原理について学ばなければいけない、と考える オステオパスが、少しづつ増えてきたのかもしれません。 テクニック関係の本と比べると、あまり売上を期待することができないDr.スティルの 著書の日本語訳を出版してくれたオステオパシーメディスン協会には、今後の 日本のオステオパシーのことを考えると、いくら感謝しても足りないくらいです。 オステオパシーと同様に西洋医学(アロパシー)とは全く違う考え方の医学に 「ホメオパシー」がありますが、もし私があるホメオパスのところに行ったときに、 そのホメオパスに「私はサミュエル・ハーネマンの著書は1冊も読んだことは無いが、 最新のホメオパシーの研究理論に基づいて仕事をしている。」と言われたとしたら、 私はそのホメオパスにレメディを選んでもらおうとは思わないでしょう。 自分がおこなっている療法の創始者がどのようなことを考え、どのようなことを 書き残したかも知らずに、最新の研究理論やテクニックばかりを追い求めるのは 基礎工事もせずに、高層ビルを建てているようなものではないでしょうか? 最初は良いのかもしれませんが、そのうちビルは傾き始め、やがて崩れ去って しまうでしょう。 Dr.スティルも言っているように、オステオパシーの基本原理さえ分かっていれば 治療方法など、自ずと導き出されるものなのです。 実際に私は、現在一般的に知られているオステオパシーのテクニックを一切使用 せずに、筋骨格系、全身性、循環器、呼吸器、消化器、内分泌系、アレルギーなど 病院では治らなかった方々に対して、効果をあげています。 もし、スラストや、筋エネルギーテクニック、カウンターストレインなどしか使えな かったら、乳幼児の施術など出来ません。 大切なことは、やはり基本となる考え方だと私は思っています。 オステオパシー創始者Dr.スティルのテクニックは100年近く失われたままだった と言われ、そのテクニックを復活させたのが、R・V・バスカークDOのスティルテクニック だと言われています。 しかし実際のところ、Dr.スティルの著書「Osteopathy Reserch and Practice」1910  には、かなりの数の治療テクニックが載っていますし、その中の多くの治療方法は R・V・バスカークDOのスティルテクニックの治療手順では説明出来ません。 Dr.スティルは患者の体の状態に合わせて、臨機応変に様々な方法を駆使しています。 その一部はR・V・バスカークDOの著書「スティルテクニック」の日本語版にも 最後に補遺Aとして載っていますので、Dr.スティルがいかに多彩な方法で治療して いたかを、是非読んでいただけたらと思います。 最後に、 Dr.スティルの著書にはエドガー・ケイシーのリーディングと同様に現代医学の 常識、さらに現在の私の知識では理解できないような内容が多く含まれています。 そういった内容を読むと、Dr.スティルもまたどこかとつながっていたのかも しれないという気がしますが、もしそれらを理解することが出来れば、私の オステオパスとしての能力も、さらに上のレベルにステップアップすることが 出来るのではないかと考えています。 まだまだ道のりは長そうです・・・。
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