「アトピーの脱ステロイドに関して。」

近頃、私が問題だと思っていることを書きます。 それは、一部の自称「自然派」?の医師達が提唱しているアトピー性皮膚炎の 脱ステロイドの方法です。 その方法とは簡単に書くと、  ・ステロイドを一切塗らない  ・保湿剤も塗らない  ・風呂にも入らない  ・タンパク質を大量に摂取する 私からすると、身体の状態を更に悪化させているとしか言いようがありません。 この方法を忠実に実行して子供の症状が悪化し、母親がどうしようもなくなって 当院に子供を連れてくるケースが最近増えています。 この自然派医師達は「アトピー自然治癒力だけで治る」と主張していますが、 病が自然治癒力だけで治るのなら、病気などこの世に存在しないことになって しまいますし、医師も必要ないでしょう。 タンパク質を大量に摂る、というのは場合によっては皮膚症状が改善したと感じる 人がいるかもしれません。 しかしこれは大量に摂取したタンパク質が皮下に溜まり、皮膚からの排泄経路に 蓋をしてしまっている状態だと私は考えています。 端的に言うとアトピー性皮膚炎は排泄障害ですから、皮膚からの排泄経路に蓋を してしまっては、一見すると皮膚症状が改善したように見えたとしても、実際は 体内の環境は更に悪化し続け、違った形で問題が出てくるでしょう。 大人になってから急にマクロビオティックを始めた人の中には、アトピーのような 皮膚症状が出る人がいますが、この場合は要するにタンパク質を大量に摂取して 皮膚症状が改善したように見えるのとは逆の現象が起きているということです。 マクロビオティックを始めることでタンパク質の摂取量が一気に減少することにより、 間質膠質浸透圧が低下し、それまで皮下に溜まっていた物質が細胞間質に溶け 出してくるが、リンパ系での処理が間に合わず、体が間質に溶け出してきた物質を 皮膚から体外に排泄しようとしている、というのが私の見解です。 自然派医師の指導でアトピー性皮膚炎が悪化、或いは全く改善しないケースで 当院に来院された場合、まずは最初に書いた自然派医師の指導内容を一旦中止 していただき、以下のようにしていただいています。  ・きちんとお風呂に入って身体を清潔にする  ・オステオパシーの施術を受けながらであればステロイドを使用しても良い  ・ステロイド使用に抵抗感があるならば、皮膚の状態によっては天然成分等の   保湿剤を使用する  ・通常の食事に戻してタンパク質の過剰摂取をやめる ステロイドと保湿剤に関しては、それぞれのお母さんの考えもありますので、あえて 強制はしませんが、身体を清潔にすること、タンパク質の過剰摂取をやめることは お願いしています。 身体を不潔にしていると、体に害を及ぼす可能性のあるさまざまな菌が皮膚表面で 繁殖するでしょうし、いつも書いているように体内の結合組織内へのタンパク質の 沈着が、ほとんどの病気の原因だと私は考えていますので食べ物にも気をつけて いただきます。 ただし患部を外界から遮断して密閉する湿潤療法に関しては、全身症状の場合は なかなか難しいですが、部分的な皮膚症状の場合には効果が高いと思います。 次に私なりの、「脱ステをすると皮膚症状が悪化する」という現象の原因を書きたい と思います。 先程も書いたようにアトピー性皮膚炎は体内の排泄障害が原因で、体内で産生された 老廃物などをリンパ系で吸収し、肝臓等で分解するというサイクルが正常に行われて いないことが問題です。 重度のアトピーのお子さんですと、頭部などは使い古して酸化した天ぷら油のような 匂いがすることが多いのですが、これは食事により体内に取り込んだ食物、あるいは 体内で産生された水に溶けにくい物質が皮下に長期間溜まって酸化しているために、 このような匂いがするのでしょう。 ステロイド脂溶性ですから、皮下にあるこれらの水に溶けにくい物質を溶かす 作用があるため、それらの物質を溶かして流してくれていると私は考えています。 しかし、ステロイドは単に表層に上がってきた物質を流すだけの作用しか持たない ため、ステロイドを使用している間も深部の環境はますます悪化していきます。 そのため、ステロイドをやめると急激に症状が悪化したように見えるのです。 ですから脱ステで急激に症状が悪化するのは、よく言われているようにステロイド が体内に蓄積してしまったことが原因ではありません。 アトピー性皮膚炎は他の皮膚疾患と同様に、いくら皮膚だけにアプローチしても 根本的な解決には至らず、オステオパシーなどで体内の環境を整え、血液、リンパ、 自律神経系などの状態を良くすることで、はじめて治すことが出来るのです。 自然派医師の中にもケイシー療法を取り入れて成果を上げている人、断食療法で 結果を出している人、また私の知り合いの歯科医の中には歯列矯正が早く進む ように、一般的な歯科治療の常識に囚われず、自ら患者の頚椎、頭蓋などの調整を おこなう方もいます。 このように自ら研究して、確かな結果を出している素晴らしい自然派医師も存在 しますが、その一方で自分が作り上げた机上の空論に固執して、患者の状態が 悪化していることを無視し、患者に害を与えている医師がいることも事実です。 また私がこれまでに聞いた中では、世間的に有名になった医師の理論を前面に出して 患者を集め、自らは何の努力もせずにただ真似をしているだけのため、症状が悪化 してもどうしてよいか分からず、「経過観察」と称して放置するだけの医師もいます。 何も考えずにステロイドを処方し続ける医師にも問題はありますが、アトピー患者の ステロイドに対する恐怖心を利用して、治りもしない、治療とも呼べない指導を続け、 症状が悪化しても、個々の患者の身体の状態も把握せずに「自然治癒力で治る」と 無責任なことを言う医師にも大きな問題があります。 今の時代、情報が溢れていて何が正しいのかを見定めることが難しくなっていますが まずは自分の直感を大切にすることが最も重要かもしれません。 最初に書いた医師の指導内容を読んで、「これなら治るかもしれない。」と感じる でしょうか。
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