「オステオパシー総覧(上) ー 腫瘍学」
今回は「オステオパシー総覧(上)第35章 腫瘍学」(アメリカ・オステオパシー協会編 森田博也訳)から、
・オステオパシーのアプローチ
・OMTの適応症
以上2項目を抜粋して転載いたします。
なおOMTとはオステオパシック・マニピュレーティブ・トリートメント(Osteopathic Manipulative Treatment)の略称です。
・オステオパシーのアプローチ
オステオパシー医師の多くは、がん患者にマニピュレーション治療をおこなうことは禁忌である、という誤った考えを持っている。
たしかに、あるテクニックまたはある患者については、それが当てはまるかもしれないが、別のテクニックを使うことにより、次のような効果がもたらされる。
痛みの緩和
内臓機能の改善
緊張とストレスの軽減
身体に触れることを通じたオステオパシー医師・患者間の人間関係の改善
・OMTの適応症
OMTが的確な判断によって適応されれば、がん患者のケアにおいて貴重なツールとなるだろう。
がん患者というのは、ソマティック・ディスファンクション(体性機能障害)や痛みはがんでない患者と同程度ではあっても、より大きな心理的ストレスを抱えている。
また、がん患者には、がんの痛みと同様に術後痛もあるだろうし、終末期の患者であれば身体を動かせないために生じる内臓機能障害が起こるであろうが、OMTはそれらに対して適用できる。
OMTのがん患者における適応症は次のものである。
痛み・ソマティック・ディスファンクション
便秘
無気肺
肺炎
術後リンパ水腫
がんであることがわかっている患者に対してOMTが最も適しているのは、ソマティック・ディスファンクションに伴う筋骨格系の痛みで、がんとは直接関わりのないものである。
ソマティック・ディスファンクションは、がんや治療法に関係しない、または2次的に生じる場合もある。
たとえば、胸骨正中切開術を受け肺がんを切除した患者は、術前から現れていたソマティック・ディスファンクション、手術によって悪化したり、肺から胸椎への内臓体性反射、または手術時に肋椎関節や肋軟骨関節が損傷を受けたりすることにより、胸部や肋間に痛みを訴えるようになることがある。
筋骨格系に痛みのあるがん患者のソマティック・ディスファンクションを治療するテクニックは、特に患者一人ひとりに対して個別に選択する。
選択基準となるものは以下のとおりである。
患者の年齢
疾病の重症度
過去に受けた損傷
合併症
術後の経過日数
以降はオステオパシーのテクニック的な内容なので省略します。
私が太字にした部分にこの文章を書いたオステオパシードクターの考えが集約されていますが、「オステオパシー総覧」のそうそうたる編者達はオステオパシーががんの治療に効果を上げることが出来るとは、全く思っていません。
Dr.スティルがオステオパシー的な観点から、腫瘍の発生原因にまで言及しているのとは、対照的です。
オステオパシー総覧は現代のオステオパシーに関する文献の中では、最も権威のあるものだと思いますが、オステオパシー総覧の内容と、オステオパシーの創始者Dr.スティルの著書の内容のあまりの乖離に、なにを言えば良いのか私には分かりません。
「オステオパシー総覧」の編者達は、当然Dr.スティルの著書を読んでいると思うのですが・・・。
近いうちに、「がん」についての私なりの見解も書きたいと思います。