「がんに関する考察。(3/3)ー がん細胞とバッタの相変異2」

今回は昆虫学者の前野 ウルド 浩太郎氏の著書を参考に、バッタの相変異について書きたいと思います。

 

なお、前野 ウルド 浩太郎氏は秋田県出身の純粋な日本人。

「ウルド(Ould)」とはモーリタニア語で「〇〇の子孫」という意味のミドルネームで、彼がモーリタニア国立サバクトビバッタ研究所に在籍中、所長のババ氏が授けてくれたものです。

 

前回説明したバッタの相変異ですが、どのような状況がバッタの相変異を引き起こすのか?

以下は前野氏の著書からの抜粋。

 

「例年にない大雨が、今回の事態を引き起こした一因だと考えられる。過去の歴史的なバッタの大発生が起きた年は、決まって干ばつのあとに大雨が降っていた。今回の状況はまさにそれを再現したものであり、極めて危険な状態だった。」

 

では、なぜ干ばつ後の大雨がバッタの大発生を引き起こすのか?

前野氏は個人的な見解として、こう書いています。

 

「干ばつによってバッタもろとも天敵も死滅し、砂漠は沈黙の大地と化す。バッタはアフリカ全土に散らばり、わずかに緑が残っているエリアでほそぼそと生き延びる。

翌年、大雨が降ると緑が芽生えるが、そこにいち早くたどり着ける生物こそ、長距離移動できるサバクトビバッタだ。普段なら天敵に捕らえられ、数を減らすところ、天敵がいない「楽園」で育つため、多くの個体が生き延び、結果、短期間のうちに個体数が爆発的に増加していると考えられる。」

 

 

ここからは私(眞野)の補足です。

私が子供の頃、家の周囲の畑や野原にトノサマバッタがいましたが、通常(孤独相)のトノサマバッタでも、ときには数十メートルの距離を飛び、なかなか彼らを捕まえることは出来ませんでした。ですから大雨後、最初にサバクトビバッタが緑のある場所にたどり着くというのは、私も納得出来ます。

 

 

こちらは孤独相と群生相のトノサマバッタサバクトビバッタ

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孤独相が群生相になるメカニズムの一つに、コラゾニンというホルモンが関与していますがコラゾニンは体色を変化させ、さらに体の形態も変化させます(このメカニズムを発見したのは日本人研究者の田中誠二氏)。

 

また、田中誠二氏と前野 ウルド 浩太郎氏の研究により、これまでは孤独相から群生相への変化には4世代程度かかると思われていたものが、条件さえ整えば1世代で完了するということがわかりました。

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成虫期の密度、孵化時の体サイズ、幼虫期の密度などの条件が揃うとたったの1世代で孤独相から群生相に変化するわけですが、逆もまた然りで条件しだいで群生相から孤独相へも1世代で変化します。

  

孤独相から群生相への変化は、個体数が爆発的に増え生息環境が悪化することにより、バッタがその個体の系統を維持するために特定の遺伝子のスイッチをONにする。

それにより長距離飛行を可能とし、エサが豊富な、より良い環境へと移動出来るようにするためでしょう。

 

バッタの場合は外的な環境悪化が遺伝子のスイッチをONにする要因ですが、がん細胞の場合は体内の部分的な環境悪化が、そのエリアにある正常な細胞のがん遺伝子をONにしてがん化するのだと私は考えています(実際のところ体内には常にそれなりの数のがん細胞が存在しており、通常は体内の免疫系により除去されていますが、体内環境の悪化により免疫系が働かなくなることが、がん細胞増殖の原因)。

条件次第では、たったの1世代で群生相のバッタが遺伝子をOFFにして孤独相へと戻ることができるのならば、がん化した細胞もがん細胞周囲の体内環境を整えさえすれば、正常な細胞へと戻るはずです。

 

群生相へと変化したバッタは本来の姿(孤独相)を覚えていないと思いますが、ケイシーリーディングでも、がん細胞はある程度増殖すると、

「一個の独立した生物のように振る舞い、宿主に寄生して、身体のエネルギーや栄養を奪うような存在となる。」

と書かれており、さらに 

「ある段階に達すると遊走能を獲得し、他の部位へと転移する。」

と書かれています。

この段階になると、すでにがん細胞はその身体の一部であったことを忘れていますから、群生相へと変化したバッタがより良い環境を求めて飛び立つのと同じように、自らが生き延びるために、より良い環境を求めて移動を始めるのでしょう。

 

ケイシーリーディングの内容は、明治13年(1880年)の北海道の蝗害(こうがい)報告書の記述を彷彿とさせます。

   

初めは方位を定めず、乱躍するのみにて遠く走らず。

その状、羽翅を練磨するものの如し。

かくして二、三日を経れば、一群みな方向を同じゅうし、天を覆い陽を遮切りて群飛す。

 

  

Dr.スティルは、

障害となっている原因をそれなりに適当な期間内に取り除けば、腫瘍は消滅に向かうことになる。」

と書いています。

 

ですから各種の方法で体内の環境を整えることにより、がん細胞も本来の姿を思い出し、がん遺伝子をOFFにして、正常な状態へと戻るために自ら退縮していくはずです。

ただただ攻撃するのではなく、がん細胞が置かれている過酷な環境を理解し、その状況をいかに早く本来の正常な状態へと変化させるかが重要なことではないかと私は考えています。

そのためには物理的、生化学的、心理的など、個々の患者の状態により、さまざまなアプローチが必要になってくるでしょう。

 

 

 

 

 

 参考書籍

 

「バッタを倒しにアフリカへ」 前野 ウルド 浩太郎

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「孤独なバッタが群れるとき」 前野 ウルド 浩太郎

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