「種苗法に関して更に調べてみた(1/3)。」

今国会での種苗法改正の審議は見送られましたが、私の中でまだ理解が不足している部分があり、横浜植物防疫所農林水産省食料産業局知的財産課に電話で聞いてみました。(審議はまだ見送られていませんでした。6/1追記)

私のような一般人の質問に、どちらの担当者も丁寧に対応してくだり、より理解が深まりました。

ありがとうございます。

まず最初に農林水産省のホームページの種苗法改正案に関するページの「よくある質問」から種苗法改正理由について↓

 

 

なぜ種苗法を改正するのですか。

農業者の皆様に、優良な品種を持続的に利用してもらうためです。

日本で開発されたブドウやイチゴなどの優良品種が海外に流出し、第三国に輸出・産地化される事例があります。また、農業者が増殖したサクランボ品種が無断でオーストラリアの農家に譲渡され、産地化された事例もあります。このようなことにより、国内で品種開発が滞ることも懸念されるので、より実効的に新品種を保護する法改正が必要と考えています。 

 

こちらは農水省のサイト↓

種苗法の一部を改正する法律案について:農林水産省

 

こちらはサクランボ流出の記事、農家が日本人社員にどのような経緯で枝を譲渡したのかは書かれていませんでした↓

サクランボ海外に持ち出し 豪人ら告訴へ - 新聞に見るオーストラリア

 

 

ニュースでは「国内の優良品種が海外に流出」と書かれており、新聞、テレビとも同じように報道されています。

私はこの「流出」という言葉を、国外に違法に持ち出されたものだと勘違いしておりました。

現状では私も含めて誰でも日本国内の登録種苗を、中国、韓国、オーストラリアなどへ合法的に持ち込むことができます。

それはこれらの国はUPOV条約に加盟しているためです。

さらに、シャインマスカットを開発した政府機関の農研機構の登録品種は、2年ほど前に登録された品種でも、ネット、種苗販売店などで身分証明の必要も無く、誰もが手軽に購入することが出来ます。

つまり農家が全く関与しなくても、誰もが登録して間もない農研機構の登録品種の種苗を購入して、合法的に海外に持ち出すことが出来るのです。

 

 

 

UPOV条約とは

UPOV条約(ユポフ条約と読みます)は植物の新品種を各国が共通の基本的原則に従って保護することで、優れた品種の開発と流通を促し、農業の発展に貢献することを目的として締結された条約。

2018年1月現在、UPOV条約加盟国は75の加盟国が参加し、94の国と地域に保護が及びます。

この条約の加盟国間であれば、自由に種苗を持ち出すことができます。

 

UPOV条約日本語訳↓

https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/new_varieties_of_plants.pdf

 

ウィキペディア

植物の新品種の保護に関する国際条約 - Wikipedia

 

UPOV条約加盟国一覧↓

https://www.tm106.jp/?p=10411

 

f:id:hakusanoste:20200529122240p:plain

 

 

つまりUPOV条約加盟国間であれば、検疫(病害虫などの検査)を通りさえすれば、日本人、外国人に関わらず誰もがシャインマスカットのような登録品種を合法的に国外に持ち出すことができます。

 

 

以前の「種苗法改正法案が成立するとどうなるのか-アメリカ篇」という記事内において元農林水産大臣山田正彦氏の、

 

種苗法に21条4項というのがあって、自家採取はいくらやっても自由だけれど、海外に持ち出すのは禁止。消費以外の目的をもって輸出することは禁止されている。

 

という発言を転載しましたが、これは正確には誤りです。

これはUPOV条約に加盟していない国との間の話しです。

 

こちらは先日の江藤農林水産大臣のメッセージ↓

 www.youtube.com

 

 

以下に内容の抜粋↓

 

海外流出の話しをしますと、UPOV条約という条約がございます。

海外に流出するのはまずいとみんな思っていると思います。

一昨年おこなわれた平昌オリンピック、あの時にですねカーリング女子の皆さんがいちごを食べていてですね、美味しそうないちごだな、日本産かなと思ったら韓国産らしいと、平昌オリンピックだからしょうがないかな思っていたら、もともとの種苗は日本から渡ったものらしいと話題になりました。

国会でも委員会で取り上げられたことが、たびたびございます。

そしてどうしてそんなことが起こったんだという議論になりまして、そうしているとシャインマスカットとかいろんなものが、しっかりと保護されていない。

海外に流出してしまった。

UPOVは76カ国加盟と申し上げましたが、植物の権利を保護しようという国際条約です。

中国も韓国もこの条約には加盟しておりますが、加盟国に対しては登録品種であっても今の法制度の下では海外流出を止められません。

これは大きな問題です。

これがしっかり守られていれば、農家にはもっと利益が還元されていたはず。

それが海外に種苗そのものが流出したことによって、海外で作られてしまう。

紅秀峰にいたってはオーストラリアに流出をして、全く同じ品質のものが日本に逆輸入されている。

山形県では加温して育てているイチゴがサクランボが市場に出回っています。

日本で守られるべきだったものが、自家増殖によって海外に持ち出されてしまった。

こういったことはあってはならないことだと思います。

 

(和牛に関する部分は省略。)

  

今回の改正でUPOVに入っている国にも歯止めはきっちりかかります。

例えば稲の場合、許諾料がある県の種苗代が1600円、このうち許諾料は2円56銭、ある県のぶどうは一本あたりの種苗代4000円、許諾料は60円。 

国の農研機構は日本の農業に優秀な種苗を供給することを目的とした公的機関ですから、この法律が改正されたからといった料金をあげることはまずあり得ません。

各県の農業試験場も県間競争がありますから、お米であったり、新しいブドウ、一個で5000円するようなイチゴ、そういったものをいったん手にいれたらいくらでも自家増殖してもいいということであれば、これを作り上げた人の5年10年の努力といったものは全く担保されない。

新しいものにお金も時間も労力もかけて開発したってすぐに自家増殖されてしまうし、そしてその先には海外流出という悲しい事実が待っているということであれば、これは農家の競争力を下げるものだと思う。

農業の生産基盤の強化、農業所得の向上、皆さんに度々申し上げてきました。

本来農家が得られるべき利益が第3者によって棄損されるということを防ぐために、私は今回の種苗法の改正は国民の不安も解消することが出来、農家の方々にも御理解いただける内容であると思っている。

 

 

以上、動画から一部抜粋。

 

 

動画内では、シャインマスカットを開発した農林水産省管轄の農研機構についても語られています。

農研機構が開発した登録品種はシャインマスカットの他にも数多くありますが、かなりの種類の登録品種が、現在も一般の種苗販売店を通じて不特定多数の人達に販売されています。

ほとんどの販売先は、購入者がどこの誰かを特定出来ないでしょう。

現状の法律では、UPOV条約加盟国へは登録種苗を誰もが合法的に持ち出すことが出来ます。

つまり種苗販売業者を通じて農研機構が開発した登録品種を購入した人が、UPOV条約加盟国へ登録種苗を合法的に持ち出しても、そのルートを全く解明出来ないのです。

これは、農家の自家増殖よりも遥かに海外流出のリスクが高いと言えます。

また県間競争といっても、開発者の権利を保護するためには、佐賀と宮崎の間で行なわれているように県単位で許諾料を払えば良いだけの話しです。

後述する福岡県のイチゴ「あまおう」は2005年に品種登録されていますが、現在も福岡県内のイチゴ栽培農家のみにしか苗を供給していません。 

ちなみに野菜に関しては現在流通している品種のほとんどはF1品種なので、現在も大半の農家は毎年種子を全量購入しています。 

 

つまり現在までの間で最も海外流出のリスクが高いのは、全国の種苗販売業者から不特定多数の人達に販売されたシャインマスカットなどの農研機構の登録品種と言っても良いでしょう。  

ですから新たな種苗法が成立して農家の自家採種を禁止しても、農林水産省管轄の農研機構が現在の姿勢を続けるならば「種苗の海外流出」は防げません。

 

農林水産大臣の言っている農家の自家採種禁止理由には、明らかな論点のズレがあります。 

農林水産省管轄の農研機構の登録種苗販売状況を見ても分かるように、登録種苗の海外流出を防ぐのに最も有効な方法は農家の自家増殖禁止ではなく、税関・検疫所等の検査体制の強化です。

水際でしっかりと止めることが出来れば、不要な税金と莫大な事務処理の労力を使った農家の自家増殖禁止は全く必要ありません。これは農水省の担当者も認めています。

 

 

 

繰り返しますが現状の法律では、UPOV条約加盟国へは登録種苗でも誰もが合法的に持ち出すことが出来ます。

 

横浜植物防疫所の担当者に確認したところ、種苗を海外へ持ち出す際は

 

・相手国側の許可証があり、検疫上問題が無ければOK

・検疫所では、特に品種表示義務はない

 

ということですから、現状ではある程度の知識があれば比較的容易に登録種苗をUPOV条約加盟国へ持ち出すことができます。

しかもシャインマスカットなどの農研機構(農水省管轄の機関、現在は独立行政法人)が開発した登録品種は、通販などで誰もが簡単に購入することが出来ます。

 

シャインマスカット(農研機構開発2006年3月9日登録 育成者権存続期間30年)シャインマスカットが一般販売されはじめた時期によっては農研機構自体が海外流出の張本人という可能性もあります。

item.rakuten.co.jp

 

クイーンニーナ(農研機構開発2011年3月18日登録 育成者権存続期間30年)

item.rakuten.co.jp

 

さくひめ(農研機構開発2018年3月9日登録 育成者権存続期間30年)

item.rakuten.co.jp

 

 

さくひめは登録されて2年ですが、もしこの苗木を日本人、あるいは外国人の誰かがネットや種苗販売店で購入しUPOV条約加盟国へ持ち出そうと思えば、現状では合法的に持ち出せます。

そこには農家の関与は全くありません。

もしかすると、ネットなどで購入した誰かが既に海外で栽培しているかもしれません。

 

このように最新の登録品種をすぐに一般販売することは、政府が農研機構を独立行政法人にしてしまったことが影響してはいないでしょうか。

独立行政法人交付金もありますが、独自で収益を上げることも求められます。

そのため、開発したばかりの新品種を生産者だけではなく一般にも販売して、収益を確保せざるを得ないのではないかと考えてしまいます。

ちなみに福岡県農業総合試験場が開発したイチゴの品種「あまおう」は2005年に品種登録されていますが、2020年の現在も苗の販売は福岡県内のイチゴ生産者に限定しています。

 

イチゴ「あまおう」の開発・普及と知的財産の保護↓

http://www.tokugikon.jp/gikonshi/256/256tokusyu06.pdf

 

 

私は農林水産省が自分達の思慮の浅さを棚に上げ、自分達への責任追及を逃れるために韓国や中国、オーストラリア、そして日本国内の農家などを悪者にして、誰もが登録種苗を容易に購入して、これらの国に持ち出せるにも関わらず「海外流出」という言葉をあえて使用し、日本国民に真実を伝えないようにしているのではないかと考えてしまいます。

経済という側面から考えれば、一国の政府が相手国の善意に期待している場合ではないでしょう。

 

以前の「種苗法改正法案の問題点」という記事において印鑰智哉氏の動画から、

 

農水省食糧産業局知的財産課によると、日本の種苗の海外流出を防ぐ唯一の防衛策は、日本以外の国での品種登録であると明言している

 

と書きました。

しかし、いろいろと調べるとこれだけでは不十分だということが分かりました。

 

正確な記事が無かったため下記の記事を使用させていただきますが、こちらも「苗木を無断で海外に持ち出す行為は違法です。」と書かれており、以前の私と同じ勘違いをしています↓

u-ff.com

 

 

上記の記事を一部抜粋↓

 

2018年の韓国・平昌オリンピックで女子カーリング日本代表たちが食べていたのは、「雪香(ソルヒャン)」という品種。
これは韓国で栽培されたものだが、もとはといえば日本の「レッドパール」と日本の「章姫(あきひめ)」を掛け合わせたもの。

 

こちらは農水省の資料↓

国内育成品種の海外への流出状況について

 

もう一度、最初の部分で書いた内容↓ 

UPOV条約加盟国間であれば、検疫(病害虫などの検査)を通りさえすれば、日本人、外国人に関わらず誰もがシャインマスカットのような登録品種を合法的に国外に持ち出すことができます。 

さらに、シャインマスカットを開発した政府機関の農研機構の登録品種は、2年ほど前に登録された品種でも、ネット、種苗販売店などで身分証明の必要も無く、誰もが手軽に購入することが出来ます。

 

つまり誰かが日本の登録品種を海外に持ち出して、そこで他の品種と交配してしまえばいくら海外で品種登録を行なっても無力となってしまいます。

 

現状では農研機構開発の登録品種が不特定多数の人間に販売されているわけですから、海外への持ち出し、持ち出した先での交配などは防ぎようが無いということになります。

 

ネットなどで、僅か2年前に登録された農研機構開発の登録品種を、身分証明の必要も無く気軽に購入できるなら、相手国の人間もあえてリスクを犯す必要はありません。 

これだけ政府、農林水産省が「海外流出」を問題にしている現在も、政府機関である農研機構開発の登録品種を誰もが自由に購入し、自由にUPOV条約加盟国に合法的に持ち出すことが出来ます。

結局は、農林水産大臣の言うところの「海外流出」は、農林水産省が管轄する農研機構や、日本政府の不手際が原因です。

それにも関わらず政府は自分達の不手際を棚に上げ、国民の税金や膨大な農協職員の労力を利用して、農家の自家増殖禁止制度を作ろうとしています。

また仮に新しい種苗法案が成立しても、シャインマスカットを開発した農林水産省管轄の農研機構がこれまでと変わらず、今後も登録して間もない種苗を不特定多数に販売することを続ければ、よほど税関・検疫所等の体制強化をしない限りは「海外流出」の防止は難しいでしょう。

 

繰り返しますが、農林水産省管轄の農研機構の登録種苗販売状況を見ても分かるように、登録種苗の海外流出を防ぐのに最も有効な方法は農家の自家増殖禁止ではなく、税関・検疫所等の検査体制の強化です。 

水際でしっかりと止めることが出来れば、不要な税金と莫大な事務処理の労力を使った農家の自家増殖禁止は全く必要ありません。

 

 

ここからが最も重要な内容です。

私がこの点を確認したところ、農林水産省食料産業局知的財産課の担当者も「農家の自家増殖を禁止しなくても、種苗法21条輸出制限国の指定と、税関・検疫所の体制強化で登録種苗の海外流出に関しては防げる」と明言していました。

登録種苗の海外流出に自家増殖禁止が必要ないならば、何故農家の自家増殖を禁止にするのかを私が尋ねると、農林水産省のサイトにあるように「より実効的に新品種を保護する」ためだそうです。

農林水産省食料産業局知的財産課の担当者によると、「より実効的に新品種を保護する」には、農家の自家増殖禁止が必須ということでした。

 

 

皆さん、この意味をよく考えましょう。

 

 

 

次回は、政府が改定しようとしている種苗法の内容と私なりの見解です。

簡潔に書くと、

「現行の種苗法は問題があるが、新たな種苗法案にも問題がある。」

ということになります。

ごく一部の人達を除き、ほぼ全ての日本国民に支持してもらえると考える案も書きたいと思います。

当然、種苗法改正に賛成している人にも反対している人にも支持され、更に費用も事務処理時間も低減できる案です。

 

  

6月1日追記

新たな種苗法で問題になっている内容の一つに、育成者権侵害かどうかを判断する「特性表」があります。

この「特性表」は子葉、草姿、葉、根などの見た目で同一品種かどうかを判断するというものです。

山形県がサクランボのDNA鑑定技術をすでに確立していますので、他の作物に関してもDNA鑑定が可能だと思われます。

 

DNA鑑定によるおうとう果実とその加工品の品種識別↓

https://www.pref.yamagata.jp/ou/shokokanko/110002/kagaku-gijutsu/syoureisyou/juyoshiki8/takahasiyosinobu.pdf

 

作物という物は、同じDNAでも栽培環境によって見た目が変わってきます。

これで見た目という曖昧なものではなく、科学的に「より実効的に新品種を保護する」ことができます。

 

お詫びと訂正:

最初の時点で農家が海外に流出させた案件は無いと書きましたが、山形県のサクランボの件はどのような経緯かはわかりませんが結果的に農家から流出していましたので、その部分は削除いたしました。

申し訳ありません。

 

 

  

6月1日再追記:

政府与党は審議入りをまだ諦めていませんでした。

6月17日の今国会会期末まで気を抜けません。

 

 

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