「種苗法改正は、地域の絆を崩壊させます。」

前回の記事の続きを書こうと思っていましたが、まだ安倍政権・農林水産省が今国会での種苗法成立を諦めていないということが分かったので、まずはこちらの記事。

 

これまで何度か引用したマリー=モニク・ロバン著「モンサント」の内容です。

こちらは以前の記事↓

「種苗法改正法案が成立するとどうなるのか-アメリカ篇」

 

アメリカではモンサント社の通称「遺伝子警察」により地域のコミュニティーが崩壊しました。

モンサント社は世界各国で莫大な経費を使って調査員を雇い、農家がモンサント社の大豆を自家採種していないかどうかを調査しており、通報用の電話回線もあります。

今回の安倍政権・農林水産省が成立させようとしている種苗法改正による農家の自家採種禁止制度は、日本政府がモンサント社遺伝子警察日本支部となったと言っても良いでしょう。

この法律が成立すれば、今後モンサント社の遺伝子警察は他国ではモンサント社が経費を支払いますが、世界で唯一日本のみ日本政府が国民の税金を使用して遺伝子警察モンサントの職務を代行することになります。 

新たな種苗法が成立すれば、農家の自家増殖を禁止する国も世界で唯一日本のみとなるようです↓

自家採種一律禁止は日本だけ! – 印鑰 智哉のブログ

 

また、新たな種苗法によって、日本の農村もアメリカと同じように地域の絆が崩壊するかもしれません。

前回記事の内容を繰り返しますが、

農林水産省食料産業局知的財産課の担当者に確認したところ、農家の自家増殖禁止を行なわなくても種苗法の一部改正と税関・検疫所の強化だけで登録品種の海外流出は防げると明言しており、登録種苗の海外流出防止に自家増殖禁止が必要ないことは彼らも分かっています。

 

 *現在、モンサント社は合併により名前はバイエル社となりましたが、やっていることは一緒です。

 

 

マリー=モニク・ロバン著「モンサント

 

アグリビジネス史上、最大の陰謀

 

P.327

「特許のせいで、すべてが変わりました」と嘆くのは、インディアナ州の農夫トロイ・ラウシュである。

「遺伝子警察」の犠牲者になった彼は、2006年10月、ヴァン・ビューレンの農場で私を迎えてくれ た。

遺伝子組み換え作物の栽培を手がける前によく考えたほうがいい、とヨーロッパの農家の人々に忠告しておきます。

ひとたび手がけると、もはや以前とは何もかもが違ってしまうのですから......」。

2メ ートルの身長があるこのたくましい好人物は、かろうじて怒りと涙を抑えながら、そうつぶやいた。

今もなお、私は彼の言葉を聞いた時の自分の気持ちを思い出すことができる。

1999年の秋、彼のもとに「モンサントに雇われた一人の私立探偵」が訪れた。

それが悪夢のはじ まりだった。

この訪問者は「種子を保存している農家に関する調査をしています」と言った。

父と弟とともに家族農場を経営していたトロイは、200へクタールの畑にRR大豆の種を蒔き終えたところだ った。

それは、ある種子仲介業者から依頼された仕事で、トロイはその業者との契約に署名していた。

さらにトロイは、前年に収穫した在来品種の大豆の種子を保存して、それを500ヘクタールの土地に植え ていた。 

「契約のためにどの畑を使用しているかは、すぐにわかりました。契約書にはっきりと明記されていましたから」と、彼は私に説明する。

「私は探偵に、その契約書や除草剤の明細書を見せてもいい、と申し出 ました。しかし、彼はそれを断わりました」。

2000年の5月、トロイは裁判所から呼び出しを受けた。

その書面には彼の所有地の地図と、そこで許可なしに採取されたサンプルの分析結果が付いていた。

「いくつか重大な間違いがありました」とトロイは述べる。

「たとえば、容疑をかけられた畑の一つは、ウィーバー・ポップコーン社の注文で、遺伝子組み換えでないトウモロコシを植えていたのです。それを証明するのは簡単でした......」

「どうして、モンサントとの示談に応じたのですか?」

「私たちの無実を証明するために、すでに40万ドルも使っていました」と彼は答えた。

「裁判に2年半 もかかっているうちに、私たちの家族はめちゃくちゃになってしまいました......。

当時の私には、もはや出口の見えない訴訟をつづける気力はありませんでした。

残念ながら、これまでの判例モンサントに有利なものでした。

モンサントは、種子の特許裁判ではあらゆる手段を利用するし、まったく抜け目があり ません。

もしこの会社が勝訴すれば、私たちはすべてを失うことが明らかでした。

モンサントは私たちのすべてを奪おうとしたのです......。

訴訟を継続した場合、私たちが手に入れるものは何だろうか、と私は弁護士に尋ねました。すると弁護士は言いました。

『無実が認められたという栄誉だけですね』と」

この面談中に、デヴィッド・ラニヨンという別の農夫が訪れた。

彼も2003年7月に「探偵」の訪問を受けていた。

探偵たちは、マクドウェル&アソシエーツという社名が記された名刺を彼に渡した。

その 名刺には大きな「M」の文字が、ケープと黒帽子を身につけた人々の絵の上に描かれていた。

デヴィッド ・ラニヨンによれば、このモンサントのエージェントたちは、「海賊行為」の容疑のある農民の畑を調査する業務はインディアナ州農務省から承認されている、と説明した。

ラニヨンは、それが事実であるかどうかを確認するために、すぐにエヴァン・バイ議員に手紙を書いた。

議員はそれを調べ、それはまったくの嘘である、という手紙を返してくれた。

この手紙は現在、私が預かっている。

「特許のせいで、農村共同体の生活はむちゃくちゃになりました」と、ラニヨンは明らかに興奮した様子で私に話した。

「特許のせいで、隣人同士を結んでいた信頼が失われました。

私自身について言えば、現在の私が話をすることができる農家は、たった二軒だけです。

ついでに、あなたのことも言いましょう。

私は、あなたと電話で話すことと会うことを了承する前に、グーグルの検索サイトで、あなたが何者なのかを調べたのです......」

「農家の人たちは、ほんとうに怖がっているのですね?」

「怖がっているのは事実です」と、トロイ・ラウシュが私に答える。

モンサントから身を守るのは不可能なんです。

ご承知のようにアメリカ中西部では、農業で得られる利益は減る一方です。

この状況の中で生き残るための唯一の方法は、農地の面積を増やすことです。

そのために一番よい方法は、隣人がいなくなることです。

そういう状況でモンサントのスパイ回線に電話を一本かければ何が起こるのか、すぐに想像がつくことです......」

「今後、モンサントから告発を受けることはないと安心できますか?」

「もちろん無理ですよ!」とデヴィッド・ラニヨンが答える。

「そもそも私たちは、インディアナ州で「最後のモヒカン族』のような存在なのです。その理由は、私たちが遺伝子組み換え帝国の中心部で、現在も 在来品種の大豆を栽培しているからです。

さらに、私たちの畑が周囲のGMOに汚染されることもあり ます。

これは私の隣人に起こったことです」

そう言ってこの農夫は写真を取り出し、トロイに手渡した。

その写真には、黄色く枯れた大豆畑にまばらに青い苗が紛れていた。

「この在来大豆の畑には、隣人の息子が区画を間違えてラウンドアップを撒いてしまったのです。

青い苗は、すべてモンサントの大豆です。

私の計算では、汚染はおよそ15%に達しています」

「どうして、そのような汚染が起こるのですか?」

「合衆国では、遺伝子組み換え大豆も在来種の大豆も、取り扱いに区別はありません」とラニヨンが答え た。

「隣人の在来品種の大豆が、前年にラウンドアップ耐性大豆の畑で使用した刈り取り機の内部に残っていた大豆と混ざったのかもしれません。

あるいは、種子を洗う時に仲買業者のところで混ざったのかもしれません。

GMOの花粉が虫や風によってばら撒かれることもあるでしょう。

この隣人は、モンサント が彼を特許侵害のかどで告発するのではないかと感じています」

「それはありえることです」とトロイが頷いた。

「カナダの農民、パーシー・シュマイザーの身に降りか かった事件のように......」

 

 

以上、マリー=モニク・ロバン著「モンサント」より一部抜粋。

 

 

 

本文中の生物特許に関して言えば、日本は世界の潮流に逆らってアメリカとほぼ同一です。 

国民の食料を確保できなければその国は滅びますから、海外では所得保障により農業を守る国が多い中、日本はほぼ何もありません。

アメリカはこれまでも農業を保護する政策を続けてきましたが、2014年2月には価格損失補償、農業リスク補償を導入、2018年トランプ政権はそれを継続しています。

EUも、所得保障等で政府が農業を手厚く保護しています。

日本の場合アメリカとは農業形態が違いますが、どこの農家も利益率は低く経営的に苦しい状況は変わりません。

そのため日本の農家は自分の子供に農家を継がせたいとは思わず、高齢化により廃業する農家が増える一方です。

アメリカやEUが農業を保護する政策を強化する中、安倍政権は日本農業の競争力を強化するという名目で、種子法廃止、農業競争力強化法制定、そして今度は種苗法改正による農家の自家採種禁止と、農家に負担を強いる政策を一貫して展開しています。

農業を自動車や家電製品と同じように考えている、むしろ大企業を保護し個人の農家を切り捨てているのは、世界中の政権で安倍政権だけかもしれません。

 

米国の農業政策:農林水産省

EUの農業政策:農林水産省

 

今後の食料危機も想定した中で自国の農業を保護するという世界の流れを十分に知った上で、安倍政権・農林水産省は世界の流れとは正反対の政策を行なっているのです。

また今回の新型コロナウイルスによる自粛警察を見てもわかるように、人は恐怖に駆られると正常な判断が出来なくなります。

SNS上でも多くの誤った情報が流され、被害を受けた人達がたくさんいます。

日本も新たな種苗法が成立し農家の自家採種が禁止されると、SNSのような個人を特定できないデマだけでも人々は疑心暗鬼となり、アメリカのように地域の絆が崩壊するかもしれません。 

 

 

 

最後にもう一度、

農林水産省食料産業局知的財産課の担当者に確認したところ、農家の自家増殖禁止を行なわなくても種苗法の一部改正と税関・検疫所の強化だけで登録品種の海外流出は防げると明言しており、登録種苗の海外流出防止に自家増殖禁止が必要ないことは彼らも分かっています。

 

 

 

参考書籍:

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パーシー・シュマイザー事件に関してはこちらをお読みください↓

hakusan-oste.hatenablog.com

  

hakusan-oste.hatenablog.com

 

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