「種苗法に関して更に調べてみた(2/3)。農水省との一問一答(1/2)」

先日お電話を頂いた農水省の担当者の方との内容を確認してみましたので、その内容と、より具体的な私からの提案です。

 

まずは、農家の自家増殖に関する部分。

 

以前に私がお話を伺った農水省の担当者は、

 

・開発者が品種を登録する際の持ち出し制限国の指定

・税関、検疫所での検査態勢の強化

 

この2点で、登録種苗の海外流出は防げるとおっしゃっていました。

 

今回、お電話を頂いた方はこれだけでは不十分なため、農家による登録品種の自家増殖許諾制は必要とのことでした。

 

私がより具体的に、

 

・現在の改正種苗法案21条では、制限国を1ヵ国づつ指定するようになっているが、登録品種は全てのUPOV加盟国への持ち出しを制限するように変更して税関、検疫所の業務を簡素化する。

開発者が現地で品種登録を行なった国などに限って、除外規定をつけるようにする。

 

・税関、検疫所には、販売日・品種名などを記入した種苗業者の販売証明書の添付を義務づける。

更に税関・検疫所では登録品種をパソコンで管理して、すぐに登録品種の確認を出来るようにする。

登録品種ならば持ち出し禁止、一般品種ならば持ち出しOKとする。

 

という案を出して聞いてみました。

 

しかし、この場合でも

税関・検疫所の職員が見落とす可能性があるので、税関・検疫所の職員の見落としを想定すると、やはり農家の自家増殖の許諾制は必要。

とのことでした。

 

次に、現在も行なわれている農研機構から種苗販売業者を通じての、一般の人達への登録種苗の販売はどうなるのか、今後の予定を聞いてみました。

農研機構から一般の人達への登録種苗の販売は、種苗法改正後も継続するという回答でした。

 

他にも質問事項があったため、詳しく尋ねずに次の質問をさせていただきましたが、上記の内容を確認してみます。

 

 

税関・検疫所の職員が見落とすケースがあると仮定すると、農水省担当者の見解によれば種苗法改正後は、

 

1,農家の自家増殖による海外流出の可能性はゼロとなる。(実際は違う・・後述)

2,「農研機構→種苗業者→農家以外の一般購買者」というルートは、今後も登録種苗が税関・検疫に持ち込まれるケースが考えられるので、海外流出の可能性は種苗法改正後も残る。

 

 

ということになります。

 

(A)

もし、税関・検疫所の職員が見落とすケースを想定すると、海外流出の可能性をゼロにするには、

 

1,農家の自家増殖を全て許諾制

2,「農研機構→種苗業者→農家以外の一般購買者」の販売ルートは全て禁止

 

という方策をとらなければいけなくなります。

 

 

(B)

一方、税関・検疫所が2重にチェック態勢をを強化して、見落としが無くなると仮定すると、

 

1,「農研機構→種苗業者→農家以外の一般購買者」の販売ルートはそのまま継続できる。

2,見落としが無くなるのであれば、海外流出防止のために法的な罰則をつけた農家の自家増殖許諾制は不要となる。

 改正種苗法案の罰則は、10年以下の懲役または罰金1000万円(法人は3億円)以下の刑事罰

 

ということになります。

  

農水省担当者の見解に従えば、海外への登録種苗流出を防ぐには常識的に考えると(A)の方法か(B)の方法のどちらかを選ぶ形になるでしょう。

やはり、現在の改正種苗法案は海外流出防止という点を考えると不十分な法案ということになります。

 

  

次に、現在の日本の一般的な農家の種苗購入の状況です。

大きく分けて、野菜、穀類、果物、花き、の4種類に分類できると思います。

 

 

1,野菜

現在も、ほぼ100%に近い農家が毎回種子を購入しており、種子開発者の権利は保護されているので、野菜に関しては種子開発者の権利保護というのは自家採種許諾制の理由にはならない。

それは、現在の野菜はほとんどがF1種(一代交配)というタネを使用しているので、品質の良い野菜を生産するには、毎回種子を購入するしか農家には方法がないのです。

ただ馬齢者は芋自体を種にし、現在も収穫した芋の一部を翌年の種にしている農家は多いため、登録品種を栽培する馬鈴薯農家は自家増殖が許諾制になった場合、確実に影響を受けます。

サツマイモも種芋から伸びた蔓を苗にするため、登録品種を栽培するサツマイモ農家も自家増殖が許諾制になった場合は影響を受けるでしょう。

 

 

2,穀類

種苗法が改正されると全ての作物の登録品種に適用されますので、米・麦・ダイズなどにも自家採種許諾制が適用されます。

農水省担当者の説明では、米・麦・大豆などは、現在ほぼ100%の農家が毎年種子更新しているので、種苗法改正後も問題無いという説明でした。

確かに私も米を作っていた頃は毎年100%種子更新を行なっていましたし、小麦を作っている近所の農家も現在100%種子を購入しています。

しかし念のため、農協職員を経てから実家の農家を継いだ友人に聞いてみると、農水省担当者の説明とは違う現状が見えてきました。

 

(1)米

私が米を作っていた頃は減反政策もありましたし、政府による米の買い取り制度もありました。

しかし現在は米の減反政策、政府の米の買い取りともに廃止され、米農家は自由に米を作り、自由に米を販売することが出来るようになりました。

作りたいだけ自由に作れるようになった代償として、政府としての価格維持がなされないために、野菜と同じように需給によって価格も大きく変動することになります。

農家が農協に米を出荷する場合は、その取りまとめを行なう団体(北海道であればホクレン)によって米の品質を維持するために、毎年の種子更新が義務づけられています。

しかし農家が自由に米を販売できるようになった現在は、農協以外の販路を見つける農家も増えています。

農協以外の販売先ですと、それほど種子更新に対して厳しくありません。

例えば一年間に1000俵(1俵は60kg)の「ゆめぴりか」を生産する農家がいて、200俵は農協、残りの800俵は農協以外の販売先という場合、農協から購入する種子の量は200俵分だけで良いということになっています。

(参考までに私の友人は20ヘクタール弱の水田の種子更新を100%しており、毎年20万円以上の種子代がかかるそうです。)

もし種苗法が改正されると、「ゆめぴりか」は登録品種ですから、この農家が農協以外の販路に関しては自家採種しようと考えると、800俵分の米の自家採種を申請して許諾料を北海道に支払うことになります。

農水省に確認した際に聞いたところ、自家増殖関連の手続きは全て農協が担当することになっているそうです。

つまり農協は、農協に出荷されることがないと最初から分かっている米農家の自家採種の手続きを全て行なわなければいけないことになり、今後も農協を経由しない農家の直販が増えていき、自家採種も増えた場合、農協の事務処理量は増えていきます。

この制度ですと農協側からも不満の声が上がるでしょうし、100%種子更新をして100%農協に出荷している農家からも、何故農協に出荷しない農家の為に農協が自家採種の事務手続きをしなければいけないのか?と疑問の声が上がる可能性があります。

 

ゆめぴりか開発秘話↓

https://www.yume-pirika.jp/story/

ゆめぴりかを買う際は、ホクレン以外のものは品質が安定していませんので、ホクレンのものを買っておけば間違いないです。

 

 

(2)麦

現在、私の地元で麦を生産して農協に出荷する場合は3通りのパターンがあります。

ちなみに農家が自分で手をかけるほど、農協から引かれる手数料の金額を低く抑えることが出来ます。

 

(A)刈り取った小麦を、刈り取り後すぐに農協の入荷センターに搬入する。

(B)刈り取った小麦を農家が自分で乾燥し、その状態で農協の入荷センターに搬入する。

(C)刈り取った小麦を、農家が自分で乾燥、さらに調整(選別)までして、品質の良いものだけを農協の入荷センターに搬入する。(このケースは自家採種する場合が多い)

 

つまり、小麦は現在でも翌年に播く種を自家採種している農家がいるということです。

するとこの農家は自家採種の届け出が必要になった場合、農協に届け出て農協もその事務処理をしなければいけません。

 

 

(3)大豆

友人は大豆に関しては詳しくありませんでしたが、小麦と同じような現状ではないかと考えています。

情報が入りましたら、追記いたします。

 

 

果樹とは違い、毎年世代が変わる毎に栽培地域の環境によって性質が変わっていく穀類は、海外流出ということも考えにくいでしょう。

しかも米・麦・大豆の育種はほとんどが都道府県の育種機関が担っているため、その地域の農家や経済が潤えば良いので、野菜とは違い種子代金から大きな利益を得ようとは考えていません。

ですから、以下のように公的機関の種子許諾料など微々たるものです。

農水省のサイトより↓ 

許諾料の例

稲(A県、10a当たり)

種苗代 1,600円(うち許諾料 自県農業者 2.56円 他県農業者8円) 

ぶどう(A県、1本当たり)

種苗代 4,000円(うち許諾料 60円)

 

https://www.maff.go.jp/j/shokusan/attach/pdf/shubyoho-6.pdf

 

ところで江藤農林水産大臣種苗法改正に関する会見内において、今後も公的機関の種子許諾料が上がることはないと述べていました。

安倍政権・農林水産省は、民間の種苗事業の発展が妨げられるとして、国として米・麦・大豆種子の安定供給を維持するための種子法を廃止し、農業競争力強化法では公的機関が持つ種苗の知見を、多国籍企業を含む営利企業に提供するようにと書いています。

一方、登録種苗の自家増殖許諾制に関する会見では公的機関の許諾料は今後も上がることは無いと言います。

この3つの法律を俯瞰して見ると、安倍政権・農林水産省は各々の法律の廃止、改正等で相反する説明をしていることがわかります。

 

 

話しが若干逸れてしまいましたが、

結局、穀類に関しては登録種苗の自家採種の許諾制は、農協の業務が煩雑になるというデメリット以外、私には見つかりませんでした。

 

改正種苗法の自家増殖に関する内容はこのようなものです↓

農業者の⾃家増殖にも育成者権の効⼒が及ぶこととする
• 登録品種に限り農業者による増殖は育成者権者の許諾を必要とする(禁⽌ではない)

 

農協の不要な業務を無くすために、私は以下のように一項目追加するべきだと思います↓

ただし、育成者権者が許諾を必要としないと認めた場合はその限りではない

 

例えば、

「北海道立農業試験場が開発した登録品種を北海道内の農家が栽培する場合は、その限りではない」

 

と北海道が認めれば、北海道内の農協は自家増殖に関する煩雑な業務がほぼ不要となります。

 

 

 3,果物

次に種苗法改正に関して、最も頻繁に話題にのぼる果物です。

農水省の担当者は、果樹農家は新規に苗を植える際は自分で挿し木をして自家増殖すると言っていました。

しかし、穀類と同様に現場の声を聞くと違った話が聞けると思い、知人に相談して果物の生産が盛んな某県の農家さんのところで、今度お話を聞いてくる予定です。

お話の内容は、後日追記いたします。

 

農家さんのお話を聞く前に私なりの案を考えてみましたが、穀類のところで書いた内容が、最も理にかなっている気がします。

つまり、

  

ただし、育成者権者が許諾を必要としないと認めた場合はその限りではない

 

この一項目を追加すれば、県などの公的機関が地域の農家が自家増殖をする場合は許諾を必要としないと認めた場合、許諾無しに自家増殖できる。

個人の育種家や企業が育種したものに関しては、育成者が許諾を必要とすれば許諾料を支払って増殖する。

 

 

4,花き

花きについても基本的には他の作物と同様に、開発者による育成者権の一部放棄の措置で問題無いと思いますが、そのうち花を栽培している知人に聞いて見たいと思います。

 

 

これで、日本国内での育成者権は守られます。

 

 

次に海外流出に関してです。

繰り返しますが、登録種苗が海外に流出しないようにするためには、税関・検疫所の態勢強化が最も確実だと思っています。

 

そもそも農家がきちんと申請して許諾料を支払い自家増殖して自分の畑に苗を植え、余った苗を誰かに譲渡してしまえば、税関・検疫所の態勢強化をしない限りは今回の種苗法改正による農家の自家増殖許諾制も意味がありません。

 

つまり現在の種苗法改正案では、農研機構からの一般販売分、農家の自家増殖分、双方とも登録種苗の海外流出は防げないということです。 

 

日本から種苗を海外に持ち出す際の現状を、横浜植物防疫所の担当者に確認したところ、

 

種苗を海外へ持ち出す際は 、

・相手国側の許可証があり、検疫上問題が無ければ誰でも持ち出しOK

・検疫所では、特に品種表示義務はない

 

 ちなみに農家戸数は全国で113万戸(平成31年)ですが、検疫所の数は全国で13箇所です。

113万戸を管理するよりも、13箇所の態勢を確実にする方が効率的で理にかなっていると思うのですが。

現場を見ていないので分かりませんが、私には税関や検疫所にイチゴや果樹の苗が持ち込まれることは、それほど多いとは思えません。

先に書いた提案で日本国内においては開発者の権利は保護されるので、海外流出さえ防ぐことが出来れば、開発者の権利は完全に保護されます。

  

より少ない費用(国民の税金、農協の事務処理費用)と労力(農家や農協職員等の負担)で、海外流出防止に最大の効果を上げるには、最初に提案した、

 

 ・現在の改正種苗法案21条では、制限国を1ヵ国づつ指定するようになっているが、登録品種は全てのUPOV加盟国への持ち出しを制限するように変更して税関、検疫所の業務を簡素化する。

開発者が現地で品種登録を行なった国などに限って、除外規定をつけるようにする。

 

・税関、検疫所には、販売日・品種名などを記入した種苗業者の販売証明書の添付を義務づける。

更に税関・検疫所では登録品種をパソコンで管理して、すぐに登録品種の確認を出来るようにする。

登録品種ならば持ち出し禁止、一般品種ならば持ち出しOKとする。

 

仮に誰かが販売証明書を偽造する可能性までも考えるなら(この場合は、公文書偽造?など種苗法とは別の範疇の犯罪も加わりますが)、

農水省が種苗の海外持ち出し専用のページを作成し、登録種苗業者がそのフォームに記入して、海外持ち出しを希望する種苗購入者にフォームのコピーを渡す。

この時点で種苗業者は、登録品種ならば海外持ち出し用販売証明を渡すことを拒否することになりますから、種苗業者、税関、検疫所と3重のチェック態勢が整うことになります。

・税関・検疫所の職員は、種苗に添付されている種苗業者の販売証明書と、パソコン内の登録種苗業者が入力したデータを照合してチェックする。

 

詳細は詰めなければいけませんが、これで100%海外流出は防げるでしょう。

 

 

これでも農水省が「税関・検疫所の職員が見逃す可能性がある」と税関・検疫所の職員を信頼出来ないのであれば、

 

農家による登録品種の自家増殖全面許諾制と同時に、「農研機構→種苗業者→農家以外の一般購買者」というルートによる登録種苗の販売も、全面的に禁止しなければいけない。

 

 

という結論になってしまいます。(これでも現在の改正案では海外流出は防げませんが。)

 

 

私は現行法は改正が必要な部分もあると思っていますが、現在の種苗法改正案は更に修正する必要がある内容です。

 

あとは都道府県の多くが種子法廃止後に独自の条例を制定したように、問題点が見つかればすぐに条例を制定して、確実に公的な品種開発を保護していくことが大切だと思います。

 

もう一つは現在の生物特許、こちらも非常に危険で、きちんと法整備しないと公的な育種機関による自由な品種開発が不可能になります。

 

 

 

他にも私が農水省の担当者に種苗法改正案の内容に関して提案した事項、質問した事項が残っていますので、「種苗法に関して更に調べてみた。」という題で、次回も書きたいと思います。

  

次回の内容は、

・「特性表」という見た目による推定制度、判定制度の問題点

山形県がサクランボのDNA鑑定技術をすでに確立しているので、より科学的な判定が出来る

・種苗のゲノム編集の表示義務の欠落の件

農家が種子を購入する際、ゲノム編集作物かどうか判断できない

・生物特許について

通常育種による生物特許の危険性

食品表示の件

今後「遺伝子組み換え作物ではない」との食品表示が禁止されることについて

・シャインマスカットの海外流出に関する農水省の説明不足の件

(2010年頃以降は、日本人でも外国人でも誰もが自由に国外にシャインマスカットの苗を、合法的に国外に持ち出せたことの説明。)

 

など。

 

 

  

参考資料:

 

検疫所の数は全国で13箇所↓

検疫所|厚生労働省

 

全国の販売農家戸数は、平成31年で113万戸↓

農家に関する統計:農林水産省

  

現行の種苗法

種苗法

 

種苗法改正案↓

https://www.maff.go.jp/j/law/bill/201/attach/pdf/index-26.pdf

 

種苗法の一部を改正する法律案の概要↓

https://www.maff.go.jp/j/law/bill/201/attach/pdf/index-38.pdf

 

種苗法の一部を改正する法律案について↓

https://www.maff.go.jp/j/shokusan/attach/pdf/shubyoho-6.pdf

 

一般社団法人 日本果樹種苗協会のサイト↓

http://www.kasyukyo.or.jp/ceeceeafafaf/aezoeaeeaeoeacycafeaaaaa/

 

ホクレン

https://www.hokuren.or.jp/

 

 

 UPOV条約締約国

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