「磁気治療の原理。(真野説)-その5」

前回までの説明により、ようやく真野的な磁気治療の原理の説明をする準備が 整いました。 キーワードは「タンパク質」、「イオン」、「ローレンツ力」という感じでしょうか。 では順を追って説明していきましょう。 まずは触診した際に身体に異常がある箇所、オステオパシー用語で言うところの SD(ソマティックディスファンクション:体性機能障害)の部分には、真野理論的 には細胞間質や結合組織の線維間に、大量の凝集した変性タンパク質の蓄積が あります。 つまり私のいう治療とは、簡単に言えばこの間質に蓄積した不要なタンパク質の 除去ということになります。 オステオパシー真野理論では、これを物理的におこなうわけですが、私が考える ところの磁気治療の原理とは、磁気により体液中のイオンを散弾銃の弾丸のように 沈着タンパク質に打ち込み、イオン(おもに水素イオンH⁺)と沈着タンパク質の 化学反応を促進させ、沈着タンパク質を効率的に分解、除去するというものです。 身体の間質には細胞更新などの代謝により、常にある程度の濃度のタンパク質が 存在し、少々の蓄積はプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)、脂質、ホルモン (特に脂溶性ホルモン)などの作用により、身体が自力で洗い流しています。 (注: このようなことは、一般の生理学書には一切書いてありません。     これまでの私の経験による、独自の説です。) しかし物理的な衝撃による組織の損傷などの原因により、自力では洗い流せない ほどの沈着タンパク質が溜まると、時間とともにその量は増えていき、ある限度を 越えると痛みや、痺れ、内臓の不調、アレルギー、内分泌系疾患、腫瘍ほか、 さまざまな症状が、身体に現れるという結果になります。 毛細血管部分の血流速度は0.3~0.7mm/secと非常にゆっくりとした 速度で流れているため、一度ある程度の量まで蓄積してしまった変性タンパク質は、 心臓の圧力と、体液に含まれる各種の触媒作用を持つ物質だけで洗い流すことは、 困難になってしまいます。 しかし身体に磁石を近づけると、前回書いたように体液中のイオンには      F = B・q・v [N]     ( 磁束密度B[T]、電荷q[C]、速度v[m/s] ) という力(ローレンツ力)が発生してイオン自体の速度が増し、沈着タンパク質との 化学反応を促進して、より効果的に沈着タンパク質を分解することができるのです。 このイオンに加わる力F[N]は式を見てもわかるように、磁束密度、電荷、速度に より決定されるので、仮に同じ量の電荷を持っているならば、当然のことながら 質量数の少ない物質の方が、より速度が増してタンパク質の分解効率が高まると いうことになります。 これが、私が水素イオンを重要視している大きな理由の一つです。 他の理由としてはナトリウムやカルシウムは、沈着タンパク質と反応した際に そのまま結合してしまい、沈着物を結晶化させて、より強固に分解しにくく させてしまう可能性がある、と考えているからです。 物質を同じ力で押した際に、より軽いものの方が重たいものよりも、早く動く のは、数式など知らなくても、感覚的に理解できるでしょう。 ちなみに 「磁気治療の原理。(真野説)-その2」で書いた、体液中の 各種イオンの質量数を比較すると、                      モル質量       ナトリウム(Na)     22.9898   g/mol      カリウム(K)       39.0983   g/mol        マグネシウム(Mg)   24.3050   g/mol             カルシウム(Ca)     40.078    g/mol          水素(H)          1.00794   g/mol これらを比べると、水素とカリウムやカルシウムでは約40倍もの質量数の 差がある、ということがわかります。 わかりやすく言うと、同じ力の強さで1gのものと、40gのものを押して いるということになるので、1gのものの方がより大きな加速度を得ると いうことになります。 1kgの米袋なら片手で持てますが、40kgの米袋だと両手でも持つのが 大変ですよね。 またカリウムとカルシウムでは質量数は同じくらいですが、体液中では カリウムはK⁺、カルシウムはCa²⁺というイオンの状態で存在するため カリウムの2倍の電荷を持つカルシウムには、2倍の強さの力が発生する ということになります。 今回はここまでにして、次回は治療に磁石を使用する際のポイントなどを 書きたいと思います。                                      白山オステオパシー院長