「確かなことは。」

以前に「技の名は。」という題で、治療家の中には自分の体で効果を感じて、 私の方法に興味を持つ方々がいるということを書きました。 しかし当然の事ながら治療家、一般の方を問わず、全ての方が私の施術を 受けて、その場で効果を実感する訳ではありません。 これまでに何度も施術後などに「こんなものがオステオパシーですか?」、 「あなたのやっていることはオステオパシーではない。」と、言われて きました。 特に現代のオステオパシー理論やテクニックに関する知識がある方や、 他のオステオパシー治療院で、現代の一般的なオステオパシーテクニック により施術を受けてきた方に、そういった傾向があるように感じます。 しかし、こればかりは私がいくら説明したところで本人が納得しない限りは こちらとしてはどうしようもないため、最終的には「そうですか・・・。」と 言うくらいしかありません。 こういった経験をして気持ちが凹んだときには、私の尊敬するDr.フルフォード に関する本を読み、自らを鼓舞することがあります。 現在の私とDr.フルフォードを比べるなど、おこがましいにも程がありますが、 例えば以下に紹介するような内容を読むと、更なる精進の気持ちが湧いて きます。 ザカリー・コモーDO著「サトル・オステオパシー」より、Dr.フルフォードの 若い頃の回顧部分。 「”偽医者、偽医者、偽医者”と言ってきたやつも含めて、他の医師達から  手紙をもらったよ。多くの医師は私がしていたことが気に入らなかったのだ。  ・・・それで私は一層努力した。」 次にアンドルー・ワイル博士著「癒す心、治る力」より、ワイル博士が慢性的な 原因不明の大腸の炎症に悩んでいる知人を説得し、Dr.フルフォードの治療を 受けさせた後の、知人とワイル博士の会話、そしてワイル博士とDr.フルフォード の会話。 参考までに当時Dr.フルフォードの年齢は70代後半で、オステオパシードクターと して、既に名声を得ていました。 「やつは食わせ物だ。」 それがキムの最初の報告だった。 「いや、いい爺さんだよ。でも、なにもしてくれない。」 「彼はなんと言ってた?」 「危険な状態だといってたね。昔の怪我で頭蓋骨の動きが完全に停止している  とかで、そのせいで消化器系を支配している脳神経が機能していないんだとさ。  その怪我のせいで口で呼吸するようになったから、脳に栄養が行ってないとも  言ってたな。」 「治せると言った?」 「ほぼ大丈夫とか言ってた。3週間後にまた来いだとさ。でも爺さん、だいぶ  弱ってるね。神経がピクピクしちゃって。気の毒なもんだぜ。  ボラれなかったのがせめてもの救いかな。」 「『神経がピクピク』って?」 「ほら、あのバイブレーター、あれを使うとき、2、3分おきに手が宙に舞い  あがり、全身が痙攣するんだよ。」 「ほんとうかね?」 「そうさ、あわれなもんだよ。」 電話でフルフォード博士の見解をたずねてみた。 「クリフトン君は瀬戸際のところだったね。」 彼はそう言った。 「一次呼吸メカニズム全体が遮断されていた。坂道を転がるように悪化する  ところだった。」 「治せますか」 「もちろん。全身の各所から思い切った解放を行ない、外傷の痕跡をかなり  ゆるめたら、インパルスの流れがもどった。迷走神経が動き出したら、  きっとよくなる。あとは気を楽にして、母なる自然の仕事にまかせようじゃ  ないか。」 治療を受けて6時間後、執拗だったキムの下痢が8ヶ月ぶりに止まった。 体重もすぐにもどり、元気を回復した。腰痛と頚部痛も消え、口で呼吸する 癖も治った。 あの偉大なDr.フルフォードでさえ若かりし頃は周囲の同業者から攻撃され、 治療が完成の域に近づいていたであろう70代後半の時期でも、治療を受けた 患者から「やつは食わせ物だ。」「何もしてくれない。」と言われてしまうわけ ですから、私のような未熟者が周囲のオステオパスとは異なることをやって いては、あれこれ言われるのも仕方がないのかなと・・・。 現状ではDr.フルフォードの姿は遥か彼方にありますが、ただ一つ確かなことは 私は当院に来た方の身体を、より早く正常な状態に回復させるためには、何を すれば良いのかを考え続け、その時点での最善を尽くしているということです。