「数学の授業にて。」

今回は、前回紹介した映画「ギフテッド」を観て思い出した、私が数学の授業中に 目撃した、ある出来事です。 私は工業高校の電気科を卒業してT社に入社し、エレベータの電気設計を担当 する課に配属されました。 現在T社に技術職として採用されるには大学卒業以上の資格が必要ですが、 私が入社した約30年前にはまだ工業高校卒でも、設計・開発部門の技術職と して採用される場合がありました。 そして当時は高卒の技術者の技術力を高めるために社内に学校があり、社内で 行われる試験をパスした者は、一年間通常の給料を支給されながら毎日朝9時 から午後5時まで勉強するという機会を得ることが出来ました。 私も一年間その学校に通いましたが、そこには日本全国から20代前半の高卒の 技術職の社員が集まっていました。 授業は専門教科に関しては、その分野を専門とするT社の社員が教え、数学や物理、 英語などの基礎科目は周辺の大学から講師が来ていました。 数学はⅠ、Ⅱ、Ⅲと3単位あり、数Ⅰの担当講師は当時、御茶ノ水女子大学において 数学教授をしていたO先生でした。 O先生は鉄腕アトムに出てくる御茶ノ水博士のような風貌で、刑務所の中で「群」の 理論を発見した数学者ガロアの話をしてくれたり、ときどき授業が脱線することも あり、私のお気に入りの先生の一人でした。 ある日の授業でのこと、O先生はまた普段の授業から脱線し、黒板に学生たちが 見たことのないタイプの微分方程式の問題を一問書き、 「この問題を解ける人はいますか?」 と、皆に尋ねました。 この時に先生は恐らく、クラスにこの問題を解くことが出来る学生はいないだろうから、 自ら問題を解き、解き方を解説しようと考えていたのだと思います。 O先生が「この問題を解ける人はいますか?」と言ったときに、一人の学生が手を 挙げ、黒板の前に行きました。 手を挙げたのは関西方面から来ていた私と同い年の学生でした(愛称はタカピー)。 タカピーは黒板に書かれていた微分方程式を少し見たあと、数式を書き連ねて いきました。 そして黒板全体がほぼ数式で埋まった時点で「出来ました」とO先生に言いました。 私にはその答えが正解なのかどうかさえ全くわかりませんでしたが、その答えは どうやら正解のようでした。 タカピーが答えを書き終えた後にO先生が、 「君はどうやって、この方法を考えついたんだね?」 と尋ねたときのタカピーの答えは、 「なんとなく。」 その言葉を聞いたときにO先生は一瞬呆気にとられていましたが、その後に、 「そ・・そう、そうなるのが一番なんだね。」 とクラスの学生達に言っていました。 タカピーの「なんとなく。」という言葉を聞いたときに、私は自分自身の数学の センスの無さを思い知らされました。 数学に関してはセンスの無かった私ですが、オステオパシーにはいくらか適性が あったのではないかと思っています。 私の場合、高校を卒業してから紆余曲折し、いくつかの職業を経て現在に至って おりますが、人にはそれぞれ、その人がするべき仕事が必ずあるようです。 まずは当ブログでおなじみ、エドガー・ケイシーのリーディングより     「すべての人は、その人自身が行なうべき仕事を持っている。      ただし、その仕事を見つけられるのは本人だけである。」                                 (リーディングNo,2823-11) つづいてヒンドゥー聖典「バガヴァット・ギーター」において、クリシュナが アルジュナに語った言葉、     「人は、幾度も繰り返された過去生により獲得した      特質によって、定められた天命をもっている。」 この記事を書いている最中に、数学者の望月新一氏が「ABC予想」を証明した というニュースがありました。 望月新一氏の経歴を見ると、まさに「ギフテッド」と呼ぶに相応しい方です。 望月氏はこの論文を自身のホームページにおいて公開したとニュースに書かれて いたので、早速見てみました。 数学に関する内容については私には全く理解不能でしたが、それ以外にも興味 深い記述がありましたので、次回はそのことについて書こうかと考えています。
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