「老賢者はホームレス。」
スイスの精神科医・心理学者のC・G・ユングが確立した心理学、一般的に
「ユング派心理学」、あるいは「分析心理学」と呼ばれている心理分析の手法では
患者の深層心理を分析するために患者の見た夢を調べ、その夢の解釈をすると
いうことが行われます。
夢は患者の深層心理を、なんらかの「シンボル」や「象徴」として表す場合が多く
分析家は患者の状況と照らし合わせながら、その意味を探っていきます。
スピリチュアル系の本などでは、よく「ハイアーセルフ」という言葉が出てきますが
これは日本語に訳すと、「浩二の事故」・・・じゃなくて、「高次の自己」、つまり
普段の生活や利害関係、金銭的な損得などとは一切関係ない、より高い意識を
持った自分自身のことを言います。
ユング心理学では、自己の象徴として「老賢者」と呼ばれるものがありますが、
これは「ハイアーセルフ」と、ほぼ同じものと考えて良いでしょう。
では、日本におけるユング派心理学の第一人者である、故河合隼雄先生による
「老賢者」の説明の一部を抜粋してみます。
「老賢者」
自己が人格化されるとき、それは超人的な姿をとり、老賢者(wise old
man)として顕現する。
このような人格像は昔話によく現れ、昔話の主人公が困り果てているときに、
助言を与えたり、貴重な品を与えたりして消え去ってしまう。
その知恵は常に全く常識と隔絶しており、それに従がったものは成功するが、
妙に人間の知恵を働かせて、疑ってかかったりしたものは、失敗してしまう。
河合隼雄著 「無意識の構造」より
ユング自身の夢の中にも、この老賢者は何度も現れていて、ユングは自身の
老賢者に「フィレモン」という名前を付け、実際に絵にも描いています。
下の写真はユング自身が描いた、彼の「老賢者」の姿です。
C・G・ユング著「赤の書」より
実は私の夢にも、一度だけ私自身の「老賢者」が現れたことがあります。
それは、私がジャパン・カレッジ・オブ・オステオパシーの2年次のとき、
2010年1月1日の朝に見た夢でのことです。
以下に、私が見た夢を書きます。
私はどこかの山道を、歩いて下っています。
道の左側には森が広がっており、右側は沢になっています。
沢の向こう側には、神社の鳥居が見えます。
山道をくだり切ると片側3車線の広い道路に突き当たり、私は神社に行くために
その広い道路の歩道を右へと曲がり、神社の方向に歩いて行きます。
その歩道の脇には、なぜか沢山のホームレスの人たちが、座ったり寝転んだり
しています。
私が、その人たちの横を歩いていると、一人のホームレスが私を呼び止めます。
私がそちらを見ると白く長い顎鬚をたくわえた、かなり高齢の老人が座っています。
その老人のホームレスは、
「今、うどんが出来たところだから食べていきなさい。」
と、私に言います。
断るのも失礼だと思い、その老人のところに行き、彼が作ったうどんをもらって
食べていると、その老人は私に、こう言います。
「お前が今やっていることは、間違っていない。
これからも、今やっていることを続けていきなさい。」
私は何のことを言っているのか、さっぱりわかりませんでしたが、
「はい。」
とだけ、答えます。
私がうどんを食べ終えると、老人は立ち上がり神社の鳥居の方向へと歩道を
歩いて行き、私も老人の後ろを付いて行きます。
鳥居の前のところには道路に横断歩道があり、老人は神社の方向へは行かずに
その横断歩道を渡って、道路の反対側へと行きます。
私もその後ろを付いて行くと、道路の反対側には住宅が並んでおり、老人は
その中の、一軒の家へと入って行きます。
私も老人の後から玄関のドアを開けて家の中に入ると、老人はいなくなって
いました。
ここで、私は目を覚まします。
実はジャパン・カレッジ・オブ・オステオパシー(JCO)の2年次の年というのは、
私にとって、非常に重要な意味を持つ年です。
エドガー・ケイシーのリーディングでオステオパシーの存在を知り、オステオパシーを
学ぶために、当時は日本で唯一のオステオパシー専門学校だった、JCOに入学
したわけですが、私が学校で学んでいた「現代」のオステオパシーの理論(例えば
「オステオパシー総覧」や「クチェラマニュアル」に書いてある内容)は、解剖学や
生理学を勉強すればするほど、矛盾点が浮き彫りになってきて、私にはどうしても
受け入れることが、出来ませんでした。
そこで、自分が触診で感じていること、解剖学書や生理学書の内容、スティルや
フルフォードの著書の内容などから自分なりの理論を考え続け、その基礎がほぼ
出来上がったのが、JCO2年次の10月頃でした。
現時点での私の考え方の概要は、こちらを御覧ください。
「 体の不調の原因とは? 」
10月頃に私なりの考え方のベースが出来て、約2か月後の1月1日にこの夢を
見たのですから、私は目覚めてから「きっと私の理論は正しいに違いない。」と
考え、その後も自分なりに疑問点を一つ一つ解決していき、確実に治療効果も
上がっていきました。
いま考えると間違いなく、この夢の存在が私を後押ししてくれたと言って良いでしょう。
あれ以来、私の夢に老賢者は現れていませんが、次に現れるのが、いつになるのか
今から楽しみです。
では最後に私の老賢者の姿ですが、私は絵心が無いのでネットから探してきた画像を
どうぞ。
雰囲気的には、ほぼこんな感じです。
私の老賢者は、ホームレスのユエン・シャオティエン・・・。
白山オステオパシー院長