「北欧訪問記(14)」

外は氷点下ですが、施設内はこのとおり。

施設の説明をするオーナー。「マルハナバチは人間と違い文句も言わず毎日働いてくれるので、とても助かる」というようなことを言ってました。

これが巣箱。飛んでいるマルハナバチが見えるでしょうか?

前回からのつづき。 最初に向かったのは、温泉熱を利用したトマトの栽培施設。 アイスランドは夏でも最高気温が20℃に達しないことも多く、露地で栽培できる 野菜というと、じゃがいもやにんじんなどの限られた種類となってしまいます。 果菜は一般的に根菜よりも温度が高くないとできないため、アイスランドの夏の 気温ではトマト、キュウリ、ナスなどの果菜を栽培することは難しく、トマトなどは 温泉熱を利用した施設で栽培されています。 この施設は全て自動制御で温度管理などを行っており、連作障害を避けるために 土は袋に入ったものを利用し、一作終える毎に入れ替えています。 外が冷涼な気候で細菌が少ないために、無農薬での栽培が可能だということです。 また受粉にはナチュポールのマルハナバチを使用していました。 イチゴ、メロンなどの果菜の受粉には、一般的にミツバチを使用することが多い のですが、トマトの花粉は美味しくないためミツバチは食べてくれません。 そのためトマトの受粉にハチを使用する際は、マルハナバチを使用します。 日本の農家も、以前は着果率を上げるため手作業で通称トマトトーンと呼ばれる ホルモン剤を花に付けているところが多かったのですが、現在は省力化のために アイスランドと同様にナチュポールのマルハナバチを使用するケースが一般的です。 これは日本の商社がオランダの会社から輸入しているものですが、日本では現在 この外来種のハチが野生化して、日本在来のマルハナバチの生存を脅かすように なり、問題化しています。 以前は、北海道では西洋オオマルハナバチは寒すぎて越冬できないと言われて いたために、一時期わたしもナチュポールを使用していたことがあります。 しかし北海道内でも越冬が確認されたため私は使用するのをやめ、その後は 出来るだけビニールハウスの換気を良くすることで、風による自然受粉で 対処するようにしました。 アイスランドに関して言えば私の想像ですが、マルハナバチが外に逃げ出しても、 周囲に繁殖できるような環境が少ないようですし、日本ほど生物相も豊かではない ので、それほど問題にはならないのかもしれません。 この施設では栽培したトマトを使用したスープを作っており、このスープはシンプルな 味付けでトマトの味が良く分かりとても美味しかったので、もしこの施設に見学に 行くことがあったら、是非このトマトスープは飲んでみてください。

付近一帯はあちらこちらから、蒸気が立ちのぼっています。

間欠泉の周囲にはロープを張ってはありますが、かなり近くまで行くことができます。 近くで噴き出し口を見ながら待っていると、噴き出し口の部分がまるで呼吸でもするかのように上下に動き出し、一気に熱水が噴き上がります。 本当に地球が呼吸しているかのようです。

数秒後は蒸気だけが残ります。

次に向かったのは「ストロックル間欠泉」。 この「ストロックル間欠泉」は5~10分おきに、沸騰した熱湯が約20メートルの 高さまで吹き上げます。 このストロックル間欠泉から数百メートルほど離れたところには英語で間欠泉を意味 する「geyser」の語源となった「ゲイシール間欠泉」があります。 ゲイシールはかつては、70~80メートルもの高さまで熱水を噴き上げていたそう ですが、現在は活動休止中です。 ただ、このゲイシールは過去にも活動を休止したり再開したりを繰り返しているので、 この先、再度活動を再開するかもしれません。 ストロックル間欠泉の4倍もの高さがあるというのですから、その時は是非見に 行きたいですね。

冬場ということもあり、滝の周囲の壁面は飛び散った水しぶきが凍りついていました。 この滝の源流は40km北にある氷河から流れ出た氷河湖ということですが、氷河が溶けた水がこれほどの規模になって常時流れているということは驚きです。

真ん中左側に立っている人と比べると、その大きさが分かるのではないでしょうか。

グルフォスの滝へ向かう道路。雄大です。

ストロックル間欠泉の次に向かったのは「グルフォスの滝」 この滝は最大幅は約70m、最大落差は1段目で約15m、2段目で約30mあり、 アイスランド随一の規模を誇っています。 20世紀初頭、イギリスの企業がこの滝一帯に水力発電所の建設を計画しましたが、 シグリットという名の少女がこの工事に反対、滝壺に自らの身を投じようとした事で 工事を中止させました。 滝壺の横には彼女の銅像が建てられ、この滝はアイスランド人の自然保護精神の 象徴とも言われているそうです。

断崖側が北米プレート、左手にはユーラシアプレートの平原が広がっています。

この裂け目が将来日本で衝突する?

日本付近のプレート図。

グルフォスの滝の次に向かったのは「シングヴェットリル国立公園」。 「火と氷の島」と呼ばれるアイスランドは、二千万年前に海底火山の噴火によって 生まれ、その後も衰えを知らないマグマの力は今もこの場所で、二つの大陸プレート の間を割って押し広げており、その両方にまたがるアイスランドの国土も年間2cm ずつ東西に広がっているそうです。 切り立った断崖は北米プレートの東端、崖の下の一段低くなった平原はユーラシア 大陸プレートで、その間に広がるのが「地球の裂け目ギャオ」です。 この国立公園は、自然遺産ではなく「文化遺産」として、世界遺産に登録されて いますが、それは西暦930年からこの平原で行われた全島民による野外集会が、 「世界最初の民主議会」にあたるという歴史的評価からです。 ちなみに地球は10数枚のプレートで覆われていて、陸地や海はその上に乗って いますが、私達の住む日本は次の四つのプレートの上に乗っかっています。   ①北米プレート   ②ユーラシアプレート   ③太平洋プレート   ④フィリピン海プレート 糸魚川-静岡構造線で北米プレートとユーラシアプレートが衝突し、押し合い 圧し合いしています。 このため、日本列島は東西に年1cmの割で縮んでおり、また中部地方から 近畿地方にかけて岩盤にひび割れ(断層)が生じています。 つまりアイスランドで東西に裂けた北米プレートとユーラシアプレートが日本で 衝突しているということになります。

夜のハットルグリムス教会。この近くに私とモリ君が3泊したゲストハウス「オーロラ」があります。

本日の夕食。馬肉、グースなど。

お店の外観。

シングヴェットリル国立公園を見学したあと、ツアーバスレイキャビク市内へと 帰路につきます。 私とモリ君がゴールデンサークルツアーに参加しているあいだに、サオリさんが 私とモリ君の宿を探してくれました。 ツアーから戻りダウンタウンでサオリさんと落ち合い、まずは予約したゲストハウス に向います。 ハットルグリムス教会のすぐ近くという好立地で、朝食付きのツインルームが3泊 で約2万円。 トイレ、シャワーは共同ですが1人1泊3000円ほどなので、現在のレイキャビク では、破格の値段でしょう。 さすがはサオリさんです。 宿のチェックインを済ませ、夜は初日にも行ったサオリさんのアパートの近くの レストランで食事をとります。 ここは、まず観光客が来ることはないお店なので、ダウンタウン中心部のお店と 比べると、かなりコストパフォーマンスの高いところでした。 馬肉、グースの肉などを注文、どれもなかなかの美味です。 このお店も8時まではハッピーアワーでアルコール半額なので、8時になる直前に 慌てて、ビールの追加注文をします。 この日も結局、結構な量のアルコールを飲んでしまいました。