「今日の映画『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』」(2/2)

では前回からのつづき。 6、ポルトガル共和国の犯罪 ・いかなる麻薬の使用も犯罪には問われない。この15年、麻薬の逮捕者はゼロ。    麻薬を合法化して逮捕者をなくしたら、麻薬の使用率が減った。 ・アメリカでは1950~1960年代の黒人の公民権運動の盛り上がりと同時に  麻薬が厳罰化された。ポルトガルでは黒人が麻薬を使っても、もちろん逮捕  されない。 ・犯罪者も選挙権を保持できる。 ・法律は人間の尊厳を守るためのものであるべきで、死刑制度は尊厳を冒涜する  ものと警官が主張。 マイケル・ムーア監督がポルトガルへ侵略中、繰り返し白人警官が黒人に対して 暴力を振るっているアメリカでの映像が流れていました。 アメリカでは、同じように麻薬を使用した白人と黒人では、刑の重さが違うそうです。 そして麻薬使用の疑いで逮捕され服役した者は、出所後も選挙権は剥奪された ままだということです。 このようにしてアメリカは黒人の権利を巧妙に排除し、州によっては黒人の1/3は 選挙権がないそうです。 マイケル・ムーア監督の映画を見ると、アメリカでの黒人差別の根深さが非常によく わかります。 参考までにオステオパシー創始者A・T・スティルですが、彼はアメリ南北戦争時 黒人奴隷解放側の北軍の指揮官の一人として戦っていました。 7、ノルウェー王国の刑務所 ・刑務所は牢屋タイプではなく、一軒家タイプで、社会復帰のための施設と考えられて  いる。 ・殺人で服役している囚人がナイフやフォークを持てる。 ・受刑者115人に対して、週末には4人の看守が、別の建物にいるだけ。 ・死刑制度はなく、大量殺人のテロリストでも最長刑期は21年。 ・世界で最も再犯率が低い。 ・受刑者も投票できる。 ノルウェー再犯率が世界で最も低いということですが、その割合は約16%。 それに対して日本の再犯率は約40%。 また皆さんご承知の通り、日本が死刑制度を止める気配はありません。 8、チュニジア共和国の女性進出 ・政府出資の女性クリニックで中絶費用が無料。こうしたサービスにより女性が  男性と対等になれると考えられている。 ・「アラブの春」の原因となったジャスミン革命が勃発。女性が重要な役割を  果たし、独裁政権を倒した。新政権は女性の権利を排除したが、女性たちが  反発した。 ・(イスラム教の慣習である)女性のスカーフをするしないは、本人の判断で  決められる。 ちなみに「ジャスミン革命」の発端ですが、大学を卒業したが就職できなかった 青年が露天商として野菜、果物などを売っていたところ、役人の不合理な取締りに より露天商を続けることが出来なくなり、青年がそれに抗議するために路上で 焼身自殺を図ったことから始まります。 「ジャスミン革命」で新政権を樹立したチュニジアの影響で、その後多くの アラブ諸国で革命により政権交代が起きました。 マイケル・ムーア監督がこの映画でなぜチュニジアを選んだのか、イマイチ わかりませんでしたが「アラブの春」はフェイスブックツイッターだけでなく、 女性が重要な役割を果たしたということを言いたかったのでしょうか。 9、アイスランド共和国の男女平等 ・世界初の民選女性大統領が誕生。 ・金融立国であるため、リーマンショックの影響をもろに受け、銀行が軒並み破綻。  その際、唯一の黒字銀行は女性経営者だった。実績や報酬に固執する男性に  対して女性は分かるものしか買わないことが功を奏した。 ・金融崩壊後、70人近い銀行家が起訴され、有罪となった。 ・完全な男女平等政策がとられる。 ・世界で最も女性が住みやすい国。 ・企業の役員の40~60%は、女性でなければならない。 アイスランドに限らず北欧全般に男女平等が浸透しているのは、2月の北欧旅行で 実感しましたが、日本が参考にできる部分もかなりあると思います。 日本でまずすべきは、保育園の待機児をゼロにするあたりからでしょうか。 またアイスランドでは4月3日にリークされたパナマ文書の中に首相の名前があった ことを受け、その翌日の4月4日には首都・レイキャビクの国会議事堂前で大規模な 抗議デモが発生。 参加者の数は全人口の10%とも言われ、4月5日にはロイグソン首相は辞任する ことを発表しました。 日本でも先日、辞任はしないと言い続けていた東京都知事が辞任しましたが、 これも都庁への3万件以上の抗議の電話やメールにより、都庁の業務に支障を きたしたことが辞任の一因と言っても良いのではないでしょうか。(日本でも アイスランドのように都民の10%が都庁前で抗議デモを行えば、もっと早く 辞任したかもしれないですよね。) 結果がどうなるのかは分からなくても、まずは行動を起こすことが大切なのだと 思います。 最後に、 先日もアメリカで50名が死亡するという銃の乱射事件がありましたが、これだけ マイケル・ムーア監督がアメリカ政府や企業の素顔を暴いても医療然り、銃規制然り ほとんど変化していません。 アメリカの現状を見ると、ほとんどのアメリカ国民は政府や企業の情報操作に よってマインドコントロールされてしまっているのではないかと感じてしまいます。 他の国ならば抗議デモが起きるようなケースでも、現在のアメリカ国民は従順に 政府の言うことを聞き入れてしまう気がします。(アメリカのデモで私が印象に 残っているのは、選挙結果を操作して大統領になったブッシュ前大統領の就任式 くらいでしょうか。) 映画の中では、多くの国の担当者が「これはアメリカが建国当初、あるいは 数十年前に最初に始めたことで、私たちはそれを真似しただけですよ。」と マイケル・ムーアに語っていました。 今回、この映画を見てアメリカ建国の精神は、どこへ行ってしまったのだろうと 考えてしまいました。 最後にトマス・ジェファソンが考えた「アメリカ独立宣言」の3つのポイントを紹介 します。 1、万人は平等につくられ、また、生命、自由および幸福追求を含む不可譲の   権利を、創造主から与えられている。 2、これらの権利を保全するためにこそ政府が設立されるのであり、政府の   正当なる権力は統治される者の同意にその根拠を有する。 3、どんな形の政府にせよ、いやしくも政府がこの目的を破壊するようになれば、   かくのごとき政府を変え、またはそれを廃止して、人民の安全と幸福とを   もっともよく実現すると思われる原理に基礎を置く新政府を樹立することは   人民の権利である。 人民がこの権利を行使するには、あまりにもアメリカは巨大になり過ぎて しまったのでしょうか。 関連記事:    「今日の映画『木を植えた男』」    「今日の映画『おじいさんと草原の小学校』」    「I have a Dream.」    「今日の映画『沈黙の春を生きて』」    「今日の映画『鬼に訊け』」    「今日の映画『ボブ・マーリー ルーツ・オブ・レジェンド』」    「今日の映画『駄作の中にだけ俺がいる』」    「今日の映画『奇跡のリンゴ』」    「今日の映画『KANO』」                                   白山オステオパシー院長