「インド訪問記(6)」
3月16日(土)
本日はマハリシのアシュラムに再度立ち寄り、その後海沿いにある世界遺産の寺院を見学し、最終的にカンチプラムまで走る予定。
出発の集合時間は午前9:00でしたが、私は早く目が覚めたのでまずはホテル敷地内にあるヒンドゥーの神様ガネーシャのところに朝のお祈りに行きます。ガネーシャはシヴァ神と妃パールバティーの長男。インドでは街角などに日本の神社のようにヒンドゥーの神様が祀られていることが多いのですが、ガネーシャは商売繁盛の神様ということもあり、最も良く見かけました(頭部がゾウなのですぐに見分けがつきます)。
私がガネーシャのところに行くとスタッフの女性がガネーシャに花を捧げに来ており、私にも花、そして眉間に白と黒の灰を付けてくれます。
その後、まだ時間には十分な余裕があるのでホテルの敷地の外に散歩に出ます。
ホテルの周囲は畑や水田が広がっており、地元の農家の人が何かの野菜を収穫しています(時刻はAM6:42)。
さらに少し歩くと稲刈り後の水田で作業している人達がいたので、遠くから写真を撮っていると一人の女性が私に気づき、こちらにおいでと私に手招きしています。
この写真のあとに、手招きされます。
作業しているところまで行ってみると脱穀の終わった稲わらを集めて、牛の餌にするために大きな山に積み上げているところでした。牛は牛乳を搾るために飼っているそうです。
最近は畑や水田を耕すのに、牛に換わりトラクターも使われるようになってきたそうですが、普段の仕事はまだまだ手作業が多いようです。日本と比較すると50年は遅れているかもしれません。
参考までに、ヒンドゥーでは牛は食べないと一般的には考えられていますが、牛はシヴァ神の乗り物のためシヴァ神を信仰している人達は食べませんが、ヴィシュヌ神を信仰している人達は牛も食べるそうです。南インドではヴィシュヌ神を信仰している人達が多く、レストランで牛肉が出ることもあるため、シヴァ神を信仰している私たちのガイドさんは南インドに来ると、誤って牛肉を食べてしまわないように完全なベジタリアンになるそうです。
農家の方々とお別れしてホテルに戻ると午前9時出発のところ、約2時間前にもかかわらず車がすでに来ていて、ドライバーさんが一生懸命に車を洗っていました。こちらの方々はもっといい加減な感じなのかと思っていましたが、真面目に仕事に取り組んでいる人が多いといろいろな場面で感じました。実際に自分の目で見て体験せずに、勝手な偏見を持つことは本当に良くないですね。
集合2時間前に来て洗車するドライバー。
朝食前にもう一度ガネーシャのところに行くと、先ほどの女性がランゴリを描いていました。
朝食後、昨日のアシュラムに行くと寺院内では火を焚いて朝のプージャー(礼拝)を行っており、しばらくその場に座ります。その後瞑想室やマハリシの写真がある部屋などを回り、最後に売店でここでしか手に入らない(ごく一部の人にとっての)お宝グッズをゲットします。ガイドさんと決めた滞在時間は30分でしたが、結果的に1時間以上もかかってしまい、「今回担当する日本人は随分と時間にルーズな人達だな~。」と、ガイドさんに思われていたに違いありません。
アシュラムを出発し、車は稲刈り後の水田で牛が草を食む農村風景の中を走っていきます。インド南部は基本的には1年中暑くて乾期と雨期に分かれており、同じ場所で雨期にはお米を、乾期には麦などのお米以外の作物を栽培するそうです。田植えの時期は雨期の始まる5月頃、収穫は9月頃と時期的には日本と同じ。
先ほども書いたように牛のかわりにかなりトラクターが普及しはじめたようですが、その理由は農家に対する政府の補助金制度が出来たことが大きいそうです。インドでは日本の自動車はたくさん走っていましたが、さすがに日本製のトラクターは見かけませんでした。多かったのはジョンディアとニューホーランド、時々ファーガソンもありました。また肥料や燃料にも政府の補助金があるそうです。インドではガソリンが1リッター約180円と日本以上に高いので、補助金がないと農家の人には厳しいでしょう。
さとうきび畑も多かったですが、このあたりの人達はさとうきびを絞ったものを冷やして朝などに飲むことが多いそうです。町中でもエンジンで2つの鉄の輪を回し、そこにさとうきびを挟んで絞るための機械を、道路脇でよく見ました。
しばらく走ると道路の舗装工事をしている人たちがいました。時間は午前11時過ぎ、すでにかなりの気温になっているはずです。この炎天下での舗装作業はさぞ大変なことだろうと頭が下がります。
昼食は、南インドを中心にチェーン展開しているベジタリアン専門レストラン「A2B」に入ります。このレストランはお手頃な価格でボリュームがあり、地元では大人気だそうです。
VEG .RESTAURANT「A2B」。インドは日本とは違い、ベジタリアンが食べる場所に困ることは全くありません。
店内の様子。
メニューの一部。私たちが注文したのはSouth Indian Meals 125ルピー(約200円)。
125ルピーでこのボリューム。
食事後、20分ほど車で走ると最初の目的地マハーバリプラムに到着します。
マハーバリプラムはチェンナイから南に約65kmほどに位置する、海岸沿いの都市。このマハーバリプラムには6世紀から8世紀頃にかけて多くの石造の寺院が建造され、1985年には世界文化遺産に登録されています。
マハーバリプラム(ウィキペディア)
私たちが見学したのは、その中でも海岸寺院として有名な7世紀に建造された寺院。
入場する際にチケットを買うのですが、インド人が40ルピーに対して、外国人は600ルピー。スリランカで世界遺産のシーギリヤに登った際も同じような経験をしました。日本では逆に新幹線他で外国人観光客が優遇されるチケットがありますが、これだけ日本に来る外国人観光客が増えているのですから、外国人料金を高くしろとは言いませんが、せめて日本も外国人観光客に対する優遇を終了しても良いのではないでしょうか?京都などでは地元住民にかなり影響が出ているようですし。
海岸寺院
海岸寺院は7~8世紀にかけてパッラヴァ朝によって建造された石積み式の寺院。石と石のあいだは植物由来の素材で接着されています。本殿にはヴィシュヌ神とドゥルガー神(パールバティ)の像があり、後部の寺院の壁には、シヴァ、ドゥルガー、幼児のスカンダを描いたソマスカンダのレリーフパネルが彫られています。
寺院の先はすぐに海岸。
右にはソマスカンダのレリーフパネルがあります。手前は沐浴場。
この中に像がありますが、暗くて上手く撮れませんでした。
ソマスカンダのレリーフ。
左がシヴァ、右がドゥルガー、真ん中に次男のスカンダ。
後ろはお付きの神様?
ここで、これまでに出てきたヒンドゥーの神様をウィキペディアから御紹介。
シヴァ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%B4%E3%82%A1
ヴィシュヌ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%8C
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%82%A5%E3%83%AB%E3%82%AC%E3%83%BC
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%83%8D%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A3
スカンダ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%80
この海岸寺院には同じような建造物がもう一つあったそうですが、約300年前に起きた津波によって流されてしまい、現在はその一部だけが残っています。またこの南インドは2004年のスマトラ沖地震で発生した津波でも大きな被害を受け、マハーバリプラムのあるタミールナドゥ州では8000人以上の尊い人命が奪われたそうです。
300年前の津波で流された寺院の一部。
海岸寺院を見学後、周辺に並ぶお店を見てみることにします。
手作りの皮のサンダルを売っているお店の前を通ると、店のお兄さんが「あなたにピッタリのサンダルがあるので履いてみて。」と言うので、試しに履いてみると本当にサイズがピッタリでした。
思わずお兄さんに「いくら?」と聞いてしまうと、「いくらなら買う?ここに書いて。」と紙とペンを差し出します。恐らく多くの日本人観光客が「手作り」、「革製」などを考えてかなり高い金額を書いてしまうのではないでしょうか?私はその手にはのらないと「お兄さんが売値を言って。」と書くのを断固拒否。お兄さんは仕方なく「700ルピー(約1100円)。」と言ってきます。私が「もっとまけて。」と交渉し、結局500ルピー(800円)となりました。
しかし財布を見ると500ルピーがありません(それくらい持ってろよ・・・)。ちょうど財布の中に1000円札(約625ルピー)があったのでこれでも良いかと聞くとOKだというので1000円を渡します。
せっかく500ルピーまで値切ったのに、それより高い金額を払ってしまいました。(それでも十分に安いとは思いますが。)
サンダルを買ったあと写真を撮ろうとすると、職人さんがすぐに作るポーズをとってくれました。慣れたものです。
こちらが1000円で購入した皮のサンダル。
適正価格なのかどうかは不明です。
遺跡の周囲では他にも太鼓、絵はがき、帽子など様々なものを売っている人達が寄ってきて、興味が無い人間にとっては全く鬱陶しいのですが、一緒にいたONさんのように丁度そのときに欲しかったものが安く買えたりもするので、一概に迷惑とも言えません。
太鼓売りのお兄さん。何度も自ら値下げしていましたが、私は買いませんでした。後ろにいるのは私がサンダルを買ったお店のお兄さん。彼も駐車場まで付いてきて、私の同行者に一生懸命売り込んでいました。
同行者の一人ODさんのインド滞在はこの日までのため、ODさんはここからタクシーでチェンナイ空港へと向かいます。
ODさんと別れたあと、車は次の目的地であるティルバンナマライへ。
こちらは車内から撮影した不思議な石「クリシュナのバターボール」。昔、王様が牛に引っ張らせたという言い伝えがあるそうですが、びくともしなかったそうです。
車はティルバンナマライに無事到着して、今回は街の中心部にあるホテルにチェックイン、ガイドさんとはここでお別れします。
ティルバンナマライは絹織物で有名な町で、通り沿いにはサリーのお店が軒を連ねています。同行者の一人ONさんがパンジャビ・ドレスを見たいということで通りに出てみます。
サルワール・カミーズ(ウィキペディア)
(お店ではパンジャビ・ドレスで通じました。)
ホテルとは反対側の通り沿いに、数あるお店の中でもひときわ店内が賑わっているお店があるので行ってみたいのですが、慣れない日本人はなかなかインドの道路を横断することが出来ません。
そこで通りにいた一人のインド人男性に「道路を横断したいので助けてくれ!」とお願いし、その男性にくっついて4人の日本人は無事に道路を渡ることが出来ました。
お店に入ろうとすると、土足厳禁なので靴を脱ぐように言われます。しかし靴の置き場も無く、靴をどこに置けばよいのか聞くと「その辺りに置いておけ。」と入り口の横を指します。「店内はあれほど混んでいるのに皆の靴はどこ?」と店に入る人達を見ていると、全員裸足で来ていました。よく見ると外を歩いている人達もほぼ裸足。なるほど。
店内は奥行きがあり、真ん中が通路になっておりその両サイドには20組以上の客が、床に沢山のサリーを広げた店員と商談しています。また壁は全ての面が棚になっておりそこにもたくさんのサリーが入っています。時間は午後7時を過ぎていますが、店内はものすごい熱気。
店員に聞いてみると、ここはウエディング用のサリーを販売しているところなのだそうです。なるほど、それなら熱も入るというものです。2階に上がるとこちらもウエディング用のサリーで1階と同様の熱気です。
店員さんに「パンジャビ・ドレスはありますか?」と聞いてみると、4階がパンジャビ・ドレス売り場ということで、4階に上がります。
私たちが4階に行くと、他の客はゆかに座っているにも関わらず、店員さんがわざわざ奥から椅子を持ってきてくれました。そして私たちの担当になったおじさんが、若い女性スタッフに次々とパンジャビ・ドレスを運ばせます。
店内には写真撮影禁止の貼り紙がありましたが、おじさんに聞いて写真を撮らせていただきました。
こちらはお店「Prakash Silks & Sarees」のサイト
私は買う気がないので眺めているだけでしたが、一緒に行った女性陣が候補を選んでいきます。パンジャビ・ドレスはサリーとは違い、採寸して縫わなければいけないのですが、ONさんがおじさんに出来上がりまで何日かかるのか聞くと4日かかるとのこと。私たちは明後日出発するので間に合わないと言うと、この店では無理だが縫うのに別料金がかかっても良いなら近所の個人でやっている裁縫の店に聞いてみる、と言うことでお願いすることに。電話をすると明日中に出来ると言う返事で、そのお店まで行くことになります。
しかも親切にも、店員さんが車で私たちを目的のお店まで送ってくれることになりました。そしてこのあと、衝撃の出来事が!!
お店の前の通りは、かなり広い通りで中央分離帯(塀)があります。
目的のお店に行くには、いったん目的のお店とは反対方向に進み、塀の途切れたところでUターンして、更にそのお店を過ぎてからもう一度Uターンして左折しなければいけません。
しかし、なんとサリー店のお兄さんはショートカットするために、反対車線を車で逆走し始めたのです!
対向車(正しい方向に走っている車)がクラクションを鳴らしながら向かって来る中を、こちらも負けじとクラクションを鳴らしまくって逆走していきます。50メートルほど走って無事に右折しましたが、洒落になりません。
日本なら全国ニュースになってもおかしくないレベルではないでしょうか?
反対車線を逆走中!(左側に中央分離帯が見えます)
右折後、狭い路地をしばらく走行。はっきり言って自分達だけでたどり着くのは無理だったと思います。
無事に目的のお店に到着しましたが、すでに閉店時刻の午後8時を過ぎていて、シャッターが閉まっています。
サリー店のお兄さんが携帯でお店の人に電話をすると、しばらくして店主が現れお店を開けてくれました。身体のサイズを計り、デザインを決めて翌日の午後には店主がホテルまで届けてくれることになりました。(翌日、約束通りにホテルまで持ってきてくれました。)
さらに帰りは、サリー店のお兄さんが車で私たちをホテルまで送り届けてくれました。インドの人達、めちゃめちゃいい人揃いじゃないですか。ただし、道路の逆走だけは勘弁してもらいたいですね。
こちらがパンジャビ・ドレスを縫ってくれたお店。
向かいはミシンを修理するお店。
ホテルに戻り、この日は久しぶりにホテルでビールを頂きました。
インドビール「キングフィッシャー」美味しかったです。
明日は、いよいよアガスティアの館を訪問。
つづく。