「日本国内の『除草剤ラウンドアップ』の使用基準に関する事実。」

今回は、モンサント社の遺伝子組み換え大豆「ラウンドアップレディー」に使用される除草剤である「ラウンドアップ」の農林水産省農薬使用基準について書きたいと思います。

なお、記事が長くなってしまいましたので、食品のグリホサート残留基準に関しては次回書きます。 

 

遺伝子組み換え大豆「ラウンドアップレディー」は、モンサント社のグリホサート製造工場(グリホサートはラウンドアップに含まれる除草成分)にある浄化槽で生きながらえていた微生物から取り出した遺伝子を組み込んだ大豆。

これにより遺伝子組み換え大豆「ラウンドアップレディー」はラウンドアップを散布しても枯れることがない。

 

現在は3世代目のラウンドアップマックスロードが販売されている。

 

ラウンドアップ」(1981~1999年、グリホサートイソプロピルアミン塩41%)

ラウンドアップハイロード」(2000~2007年、グリホサートアンモニウム塩41%)

ラウンドアップマックスロード」(2007~現在、グリホサートカリウム塩48%)。

 

ラウンドアップマックスロードは、ホームセンターやネット上で誰でも簡単に購入することが出来ます。

以下はアマゾンのページですが、ラウンドアップマックスロードがいかに強力な除草効果を発揮するのか、ページ内の動画を見てください↓

アマゾン ー ラウンドアップマックスロード

 

動画内では、このように言っています。

「従来のラウンドアップと比較すると、その差は歴然。

高い吸収力で、より確実に根まで枯らします。」

 

これほど強力な除草剤ですから、当然のことながら野菜その他の作物に付着すると障害が発生します。

こちらは千葉県農林水産技術会議の試験データ↓

「除草剤による野菜の生育障害診断のポイント」

 

上記ファイルの最初の説明部分↓

 

除草剤は 、 雑草防除を目的に広く用いられている 。

しかし 、 植物に対して強い生理活性を示す化学物質であるため、 意図せずに栽培作物に付着、吸収されると微量であっても収量や品質を大きく損なうことがある。

近年では、海外で使用された除草剤が輸入飼料に残留し 、 家畜排せつ物、堆肥等を経由して国内の農作物に被害を及ぼす事例が散見される。

 

 

ところでアマゾン内のラウンドアップマックスロードの紹介動画では、

「土に落ちた成分は、土壌微生物のちからにより炭酸ガスや水などの自然物に分解されます。」

 と言っていますが、ウィキペディアにはこのような記述もあります↓

 

1996年、ニューヨークで、モンサントのグリホサート製品のラウンドアップ除草剤に関し、「ラウンドアップが生分解性で土壌に蓄積されません」「安全で人や環境への有害な影響を引き起こすことはありません」といった一連の安全性に関する広告が、虚偽かつ誤解を招く広告と判決された。

この判決によりアメリカにおいては、広告から「生分解性」「環境にやさしい」という表現は削除された。

フランスの最高裁は、ラウンドアップの主な成分のグリホサートは、欧州連合(EU)が環境に危険だと分類しているため争われていた裁判で、生分解性できれいな土壌を残すという広告を虚偽広告と判決した。

ラウンドアップ - Wikipedia

 

 

次に作物に対する障害の画像です。以下は千葉県農林水産技術会議の資料より↓

 

圃場周辺(圃場ではなく、圃場周辺)に撒いたラウンドアップの飛沫が飛んできてこのような状態になっています↓

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以下は通常の使用濃度よりも、かなり濃度を薄くして試験している↓

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 以下はラウンドアップマックスロードの一般的な希釈倍率↓

上の実験では通常の希釈濃度の1/100の濃度でも、かなりの障害が起きている。

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次にネット上で見つけた日本モンサント試験圃場(茨城県稲敷郡河内町)の画像です。

裏手に民家のような建物が見えますが、この程度の遮蔽で遺伝子組み換え作物の試験が行なわれていることに驚きました。

風により遺伝子組み換え作物の花粉が飛散し、容易に周囲の一般作物と交雑してしまうのではないでしょうか。

農林水産省遺伝子組み換え作物試験圃場の基準はどうなっているのでしょう?

 

遺伝子組み換え大豆にラウンドアップを撒いたもの↓

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遺伝子組み換え大豆にラウンドアップを撒いていないもの(雑草が生い茂っている)↓

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遺伝子組み換えをしていない日本産の大豆(エンレイ) 左:除草剤を撒いていない 右:除草剤(ラウンドアップ)を撒いたもの、大豆が枯れてしまっている。

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上の写真を見ると、ラウンドアップがいかに強力な除草剤なのか。そしてラウンドアップ耐性大豆がいかに異常な植物であるかが、一目瞭然です。

 

参考までに、現在北海道などのダイズ農家は「草刈るチ」等の除草機を適期に使用すれば、除草剤の使用や手取り除草の必要はありません(化石燃料は使いますが)。

https://www.youtube.com/watch?v=BQKEfjMTq98

 

 

こちらは上記の写真の元記事↓

blog.goo.ne.jp

 

 

次に初代「ラウンドアップ」と、現在販売されている「ラウンドアップマックスロード」に関する、農林水産省農薬使用基準を見ていきたいと思います。

 

まずは、「作物別農薬表(1992年版)」農文協出版のまえがきから、その一部を抜粋して紹介します。

 

農業の歴史は病害虫と雑草との戦いの歴史ともいえます。

その過程で数えきれない種類の農薬が開発されてきました。

農業生産物の安定供給に農薬が重要な役割を果たしていることは、誰も否定できない事実です。

その一方では厳正な登録審査基準があり、安全使用のための試験研究や指導の努力も続けられています。

数賀山靖

 

この内容に関しては、私も否定はしません。

私も農薬を一切使わない有機農業を畑では10年以上続け、水田ではティラガモ、水田用キューホーなど各種の除草機を試しましたが納得のいく結果が出せず、手取りも間に合わなかったため圃場にミズアオイが広がってしまいました。

数年間チャレンジしましたが、最終的に周囲の農家の迷惑も考え、水田の有機栽培は断念して、田植え時に除草剤を一度使用する慣行栽培に戻した苦い経験があります。

 

 

最初に、初代「ラウンドアップ」の農薬使用基準です。

 

ラウンドアップは最初にも書いたように、ホームセンター、ネットなどで誰でも簡単に購入することが出来ます。

そのため専門的な記述は除き、家庭菜園などで使用する一般の方にも関わる部分を抜粋して書きたいと思います。

 

「グリホサート剤」 (商品名:ラウンドアップ、他にジェネリック剤あり)

・殺草作用(農薬便覧第8版 P.826)

生育中の雑草に茎葉処理すると速やかに吸収されて地下茎に移行し、地下貯蔵器官を破壊する。

殺草反応を見ると、1年生雑草の場合処理後3~5日に枯れ始め、完全に枯れ死するには夏草で15~20日、春草では10~15日かかる。

茎葉吸収移行性が大きく、ほとんどが1日以内に植物体内全体に移行して作用するので、雑草体の全部に付着させる必要はなく、また散布液量は10アールあたり50~100リットルあるいは少量散布(25リットル)で十分であるから能率的であり、付着すれば効果のムラが少ない。 

・薬害(農薬ハンドブック2001年度版 P.477)

農作物や有用植物に薬液が付着すると、激しい薬害を生ずるのでかからないように十分注意する。

・毒性(農薬ハンドブック2001年度版 P.477)

眼に対して刺激性があるので散布液調製時及び散布の際には保護眼鏡を着用する。 

(農薬ハンドブックの毒性に関しては、あくまでも散布する際の注意点。)

 

 

体内に入った場合の毒性は以下↓

 

「農薬中毒の症状と治療法」 第14版 医師用資料 農林水産省 消費・安全局 農産安全管理課 監修

 

25.アミノ酸系除草剤(別表12参照)

農薬名
グリホサートアンモニウム塩(ラウンドアップハイロード,草当番,ブロンコ)
グリホサートイソプロピルアミン塩(ラウンドアップ,三共の草枯らし,カルナクス,クサトリキング,ポラリス,草枯らし MIC) グリホサートカリウム塩(タッチダウン iQ,ラウンドアップマックスロード,タッチダウンAL,ラウンドアップマックスロード AL) グリホサートトリメシウム塩*(タッチダウン) グルホシネート(バスタ,ハヤブサ) ビアラホス(ハービエース,ハービー)

症 状

グリホサート剤
•消化器症状:嘔吐,咽頭痛,腹痛,下痢,消化管出血,麻痺性イレウス
神経症状:低血圧や低酸素血症による意識障害
•循環器症状:循環血液量減少性ショックや心抑制作用による低血圧,不整脈
•呼吸器症状:肺水腫,誤嚥性肺炎
•その他:乏尿,無尿,カリウム塩製剤では高カリウム血症

グルホシネート剤,ビアラホス剤
神経症状:意識障害,けいれん
•呼吸器症状:いびき様呼吸,呼吸抑制(呼吸停止,間歇的無呼吸)
•循環器症状:血圧低下

― 20 ―

治療法
Ⅰ章【2】項 農薬中毒の治療(P3~P5)に記した処置のうえに,
グリホサート剤の場合
•胃洗浄(意識障害がある場合は気道の確保後に実施)
•早期の活性炭・下剤の投与
•輸液(乳酸加リンゲル液)
•カテコラミン投与(界面活性剤やイソプロピルアミンの心抑制のため)
特記事項
○活性炭のグリホサート吸着量は少ない(1㎎ / 5g活性炭)。活性炭投与は,製剤に含有さ
れる界面活性剤を吸着する目的で使用。
但し,麻痺性イレウスによる腸蠕動低下時は相対的禁忌となる
グルホシネート剤,ビアラホス剤の場合
•胃洗浄(意識障害がある場合は気道の確保後に実施)
•輸液(乳酸加リンゲル液)
血液透析
•抗けいれん剤の投与

 

こちらはPDFファイル↓

「農薬中毒の症状と治療法」第14版医師用資料 農林水産省 消費・安全局 農産安全管理課 監修

 

 

ここまで書いてきた「ラウンドアップ」の特徴をもう一度確認します。

・茎葉吸収移行性が大きく、植物体の一部に付着しただけで、ほとんどが1日以内に植物体内全体に移行して作用する

・グリホサートの作用特性から、散布後すぐには枯れずに3~5日後に枯れ始める

・農作物や有用植物に薬液が付着すると、激しい薬害を生ずる

・グリホサートが体内に入った場合は、消化器症状、神経症状、循環器症状、呼吸器症状他、さまざまな症状を身体に引き起こす

 

 

これだけ強力な除草剤ですから、1981年発売の初代「ラウンドアップ」では、使用時期や使用できる作物などは、かなり厳しく制限されています。

では初代ラウンドアップの適用作物、使用時期などを見てみましょう。

 

ラウンドアップ」適用一覧  「除草剤便覧第2版」より

 

P.132 水田耕起前

使用時期 耕起10日前まで

 

P.232 水田畦畔

使用時期 収穫14日前まで

 

P.294 普通畑作物

コムギ 耕起10日前まで

オオムギ 耕起10日前まで

ダイズ 播種10日以前、または播種後出芽前まで

アズキ、インゲンマメ 播種10日以前

カンショ 耕起7日前まで

サトウキビ 耕起10日前まで

 

P.336 果菜

エダマメ 播種10日以前

 

P.360 葉菜

タマネギ、ネギ 耕起7日前まで、または定植後畝間処理(ただし収穫30日前まで)

キャベツ、ハクサイ、ダイコン 耕起7日前まで

 

 

上記のように、適用作物、使用時期もかなり厳しく制限されています。

適用作物は非常に少なく、野菜に関して言えばエダマメ、タマネギ、ネギ、キャベツ、ハクサイ、ダイコンのみ。

使用時期は、ほとんどが耕起7日前まで、あるいは播種10日以前。

 

以上が1981年発売の初代「ラウンドアップ」の適用作物、使用時期です。

 

 

次に、現在販売されている「ラウンドアップマックスロード」の適用作物、使用時期です。

アマゾンの紹介動画において、

 

「従来のラウンドアップと比べるとその差は歴然、高い吸収力でより確実に根まで枯らします。」

 

と言っています。 

従来のラウンドアップとは一つ前のラウンドアップハイロードのことでしょうから、「ラウンドアップマックスロード」は「初代ラウンドアップ」と比べると、その浸透移行性は遥かに強力になっていると思われます。

 

この強力な除草剤「ラウンドアップマックスロード」の適用作物、使用時期は、「初代ラウンドアップ」と比較すると大幅に適用作物の範囲が拡大され、ラウンドアップマックスロードは、ほぼ全ての作物に使用できると言って良いでしょう。

また、初代ラウンドアップの使用時期は、ほとんどが耕起7日前まで、あるいは播種10日以前でした。

しかしラウンドアップマックスロードでは、多くの作物において栽培期間中にも畑に撒くことが可能です。

 

 

こちらが「ラウンドアップマックスロード」の適用作物、使用時期一覧です↓

www.roundupjp.com

 

 

ラウンドアップマックスロード」の使用時期を詳しく見ると、驚くべき事に一部の作物では収穫の前日に畑に撒くことが出来ます。

 

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ここでもう一度、千葉県農林水産技術会議の資料から↓

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圃場の周辺に使用したグリホサートが飛んできて、僅かにかかっただけでもこれだけの被害が出るのです。

 

再度、「ラウンドアップ」の特徴です。

・茎葉吸収移行性が大きく、植物体の一部に付着しただけで、ほとんどが1日以内に植物体内全体に移行して作用する

・グリホサートの作用特性から、散布後すぐには枯れずに3~5日に枯れ始める

・農作物や有用植物に薬液が付着すると、激しい薬害を生ずる

・グリホサートが体内に入った場合は、消化器症状、神経症状、循環器症状、呼吸器症状他、さまざまな症状を身体に引き起こす

 

 

ここで「ラウンドアップマックスロード」を農林水産省農薬使用基準に従って使用して、実際に起こりうる状況を書いてみたいと思います。

 

これまで農業経験の全くない若いお父さんが、初めて家庭菜園を始めてみました。

畑できゅうりを栽培したのですが仕事が忙しくて除草が間に合わず、畦間に雑草がたくさん生えてしまいました。

そこで「除草剤 適用 きゅうり」と検索してみると「ラウンドアップマックスロード」が1ページ目に出てきて、しかも収穫の前日まで使用出来るということが分かりました。

さっそく近所のホームセンターでラウンドアップマックスロードを購入し、お父さんはきゅうりの畑にきゅうりにかからないように十分注意しながら撒きましたが、薬液はお父さんも気づかないうちに、ドリフトによりきゅうりの実、葉、茎などにもかかっていました。

2日後、まだ雑草はありましたが使用基準を見て「前日まで散布できるのだからもう大丈夫だろう」ときゅうりを収穫して水洗いし、サラダにして子供と一緒に食べました。

ラウンドアップマックスロードは非常に高い浸透移行性がありますから、僅かに植物体に付着しただけでその成分は1日以内に作物全体に広がり、その後植物体内に留まって徐々に殺草効果を発揮します。

収穫したきゅうりを親子が食べた翌日からきゅうりは徐々に枯れ始め、最終的には全滅してしまいました。

この親子にグリホサートにより、なんらかの中毒症状が出たかどうかは分かりませんが、通常ではありえない量のグリホサートを摂取したことは確かです。(中毒症状は農林水産省が出している医師用資料を読み返してください)。

このお父さんの使用方法は、農林水産省農薬使用基準上は何の問題もありません。

 

 

次に前回紹介した動画「巨大企業モンサントの世界戦略(後編)」7:50付近からの内容を一部抜粋(モンサント社の遺伝子組み換えダイズの発がん性に関する研究について)↓

 

残念ながら、この研究は非常に価値が低いと言わざるをえません。

このお粗末な研究論文が、これまで食べてきたダイズと実質的に同じである、つまり実質的同等性の根拠となったのです。

驚くべき内容ですよ。

動物実験によって大きな変化の起きないことが、いくばくか明らかになったと書かれています。

いくばくかの保証では足りません。

ほとんど100%に近い保証が必要です。

 

ベルゲン大学 イアン・ブライム博士

 

 

「作物別農薬表(1992年版)」においても数賀山靖氏は、

「厳正な登録審査基準があり、安全使用のための試験研究や指導の努力も続けられています。」

 と、書いています。

 

 

 

日本の農林水産省は「ラウンドアップマックスロード」を使用できる作物の範囲をこれほどまでに広げ、使用時期も大幅に拡大したのですから、ほとんど100%に近い保証を裏付ける科学的データが、全ての作物に対して揃っているということでしょう。

 

 

 

 

 

 

 参考書籍:

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